笑顔じゃなくても、ええんちゃう？ ＊腐注意 ページ10
小学校からの親友が、男が好きだと知ったのは、高校生になってからだった。
何もかも正反対の彼とボク。だけど、不思議と馬があった。
ずっと一緒にいた。好きな音楽も、好きな食べ物も、好きな事も、お互い違ったけど、お互いの好きな物がよくわかった。疲れたらすぐ｢もー足折れたー｣なんて言うくせに、体調が本当に悪い時は隠す癖も、本当は色々思っているのにそれを茶化されたくないから結局隠してしまうのも、全部知っていると思っていた。
小学校の頃は彼の妹のお迎えにもよくついて行った。そこで年下のカノジョと出会った。安子を妹みたい、と思っていたボクの気持ちが、恋だと教えてくれたのも彼だった。
彼はボクの恋をわかって、大切な人の視線に気づかせてくれたのに、ボクは彼の苦悩を長い間知らなかった。
感情の隠し事が上手い彼だったけれど、歳を重ねるうちに思い悩むことが増えたのだと思う。高校生の頃、ボクはようやくその苦しそうな顔に気づいた。
問いただした。悩んでいることがあるなら、なんでも力になると。彼は悩んだが、秘密を明かしてくれた。
｢なんで、教えてくれへんかったん？｣
忠｢色々調べてん。そしたら、同性にカミングアウトしたら、『狙ってるの？』とか言われて、関係性が変わったとかいう話、いっぱいあって。…あの、ヤス。俺、ヤスのことは、友達として好きなだけやから。男が好きとか気持ち悪いかもしれんけど、その、できたら友達でいて欲しいなって…｣
笑顔だったけど、きっとそれも彼なりの優しさと、彼なりの壁で。深刻な空気にしたらボクの選択肢が限られると思ったんやろ。それに、もしボク引いたとしても、その場を取り繕って徐々に距離を取ろうとしていたんやろ？あとでそう聞くと、彼は｢ヤスお見通しやん｣とまた笑った。
ボクは、迷った。どういえば彼を傷つけないですむのか、わからなかった。だけど、とりあえず言った。
｢気持ち悪いなんておもわへんやん！ボクかて、お前とはいつまでも友達でいたい。大事なことでも、相談出来る相手でいたい！｣
きっと、ボクにはわからないようなしんどいことが沢山あるんだと思った。だから、
｢ボクがもし、それを知らんくて、これまで傷つけてもうたことは、ある？あるんやったら、全部教えて。…これからも、教えて。全部やで！｣
そう言った時、彼は泣き笑いのような顔で
忠｢あらへんよ。1回もあらへん。｣
そういって、ようやく涙を零した。
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作者名：らむ倉 | 作成日時：2020年10月23日 23時
