凸凹な再会 ページ6
日が暮れた駅前は、キラキラと点滅する電飾で電車を降りた人を迎える季節。
安「なぁ、あのイルミネーション猫みたい!」
甘い缶コーヒーをカイロ替わりに両手で包みこんだ安子が言う。
倉「え?…そっか、うん。かわええな。」
どれが猫かわからんけど、この子には可愛い猫が見えてるんやろう。光る猫を目で探しながらコンビニで買ったカップのホットコーヒーを啜る。
安「まだかなぁ?」
倉「もうすぐやろ。」
安「あ!あの電車ちゃうかな?」
腰掛けていた手すりからぴょんっと降りた安子。私ももたれたまま視線を駅の出口にうつす。少しして電車が走り出すと同じくらいにぞろぞろと出てくる人並みに、見慣れた背の高いシルエットを見つけた。
倉「おった。」
呟いてそっと手を振りながら歩き出す。
安「え?どこぉ?安子まだ見えへん…」
倉「ちっちゃいから見えへんのちゃう?」
安「ちゃうし!倉子とたつクンがでっかいんやしー!」
可愛い抗議の声に笑いながら、気づいて手を振り返す人と、ようやく姿が見えた彼の背の低いツレに向かって歩みを進める。
忠「倉子、安子ちゃん、久しぶりぃ〜」
章「りー!」
倉 安「おかえり!」
両手を広げるしょーたくんと、躊躇なく飛び込む安子。あははっと笑いながらぎゅっと互いの体を抱きしめ合う。
忠「相変わらずやな。」
倉「もう見慣れたわ。」
忠「倉子もする?お兄ちゃんがぎゅっとしたげよかー?」
倉「いらんし。…荷物、どれか持つ。」
大好きなお兄ちゃん。だけど、目が合うと久しぶりだから少し照れてしまう。安子みたいにいけばいいのにな、なんて思いながら、顔をちょっと伏せると、頭に温もりを感じた。
忠「そんな重くないからえーよ。倉子はええこやなぁ。」
倉「…ん。寒いからはよかえろ、お兄ちゃん?」
忠「えー?たつ兄ぃって呼んでやぁ?」
倉「呼ばへん!」
いつの間にか抱擁を終えた(手はしっかり繋いだままだけど)カップルもこっちをニコニコ見ているのに気づいて恥ずかしくなる。2人から隠れるようにお兄ちゃんの片腕をぎゅっとつかんで歩き出す。
章「倉子ちゃんとたつよし、かわえーな!」
安「安子もそう思うー!」
ちょっと腹立つお花畑カップルの声と、背の高いお兄ちゃんが私に合わせてくれる歩幅。
あったかいね、お兄ちゃん。
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作者名:らむ倉 | 作成日時:2020年10月23日 23時