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ここに来たらあの日のことを思い出す。
あれから、合流したお姉ちゃんにものすごく怒られ、泣かれ、心配された。それはもう恥ずかしいくらいに。倉子ちゃんはそれを黙って見てたけど多分途中から笑いを堪えてた。
ゲーセンで倉子ちゃんに2人してボコボコにされて、フルーツスムージー屋さんで買ったバナナジュースを飲んで「あっま…」と顔を顰める倉子ちゃんに笑って、手芸品店で3人お揃いの片耳ピアスを倉子ちゃんに教えて貰って作った。いつかよかーまくんみたいにキラキラしたもんが似合う男になりたい、言うたら、お姉ちゃんはすごく複雑な顔をしていた。
倉「亮ちゃん。」
懐かしーなーとぼーっとしてた僕に、かけられる声。
「あ、倉ちゃん。」
倉「久しぶり。村子ちゃんは?」
「姉ちゃんな、めっちゃ忘れ物して1回帰った。今向かってるとこやって。」
倉「相変わらずやなw」
あの日、頑張って考えたあだ名は案の定既出で、「どっくん」みたいにオンリーワンの名前じゃなかった。けど、倉ちゃんは「あだ名で呼んでくれる人少ないからうれしーで。」と笑ってくれた。
ベンチから立ち上がった僕を見て倉ちゃんは、
倉「けっこう背ぇ伸びたな。」
と微笑んだ。
「やろ?僕牛乳めっちゃ飲んでんねん!」
倉「や、でもまだ私のが高いか…」
「…!?ほんまや…いや、姉ちゃんよりは高なったし!」
背を比べる為に倉ちゃんの頭の高さから水平に伸ばされたその手のひらまで、あと少し。ムキになってちょっと背伸びしてみると、少し触れた手がそのままクシャッと僕の頭を軽くかき混ぜる。懐かしいその細い指が掠めるのがなんだか擽ったくて、僕はちょっと照れて頭を引っ込める。
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作者名:らむ倉 | 作成日時:2020年10月23日 23時