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「…何見とんねん?」
気だるげな目に射すくめられたように動けなくなる。この人たちは、いい人じゃない。ここから早く逃げないと。そう思うのに足が動かない。
ひとりがにかーっと口角を上げて立ち上がり、こちらへ向かってくる。細い目を更にスーッと細めてジロジロと舐めまわすような視線。蛇みたい。焦って怖くて仕方ないのに、頭のどこかが妙に冷静にそんなことを考える。
「僕ぅ、あかんやんこんなとこ子供が来たら。迷子ぉ?お兄ちゃんと遊ぶぅ?」
ぽん、と肩に置かれた手。アソブ?それは一体どういう意味で?情けない頭が真っ白になっていく。
その時
「…何しとんねん。」
頭上から降ってきた声。
いつの間にか背後にたっていた男が、僕の肩に置かれた蛇目の手を掴んで退ける。
蛇目が「お、お前…」とその手を振り払って後ずさる。壁にもたれたままだったあとの4人も身構える。リーダー格?のキンパが口を開く。
「…ガキが迷うてたから遊んだろ言うとるだけや。」
背後の男は
「やったら俺が連れてく。…弱いもんイジメて遊ぶんダサいからやめぇや。」
そう言って僕の手を掴んで踵を返した。
背の高い男の広い歩幅にグイグイと引っ張られていく。
助けられたん…?でも、このまま着いてってええん?さっきの人ら見た感じ、この人、もっとやばい人ちゃうん?
頭の中でぐるぐる考えるうちに幾つか路地を抜け、いきなり広い道に出た。
「…え?」
あんなに迷っていたのに、ここはもう知っている場所だ。あっけない迷宮に思わず声を漏らすと、男はそれを見て少し笑った。僕の正面にしゃがんで僕の顔を見上げて、
「あかんやろ、あんな危ないとこ入ったら。この街は、広い道からすぐあんなとこばっか入れるねんから。冒険はもうちょい大人になってからにした方がええ。…怖かったなぁ?でももう大丈夫やし。」
その顔を初めてちゃんと見た。さっきの人らと似た金髪に着崩した制服。だけどその表情は柔らかで、なんの確証もないけど安心感に包まれるようで、
あっという間に視界がぼやけて涙が零れた。大きな手で頭を撫でられるまま、しばらくそこで泣いていた。
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作者名:らむ倉 | 作成日時:2020年10月23日 23時