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カフェラテの白い泡にスティックシュガーを注いで鼻歌交じりに混ぜるその目の前には、宝石みたいな大きないちごのショートケーキ。
フォークでひょいと真っ赤な主役を奪うと、「あーー!!」と追いかける指先。捕まる前に頬張る。
大きな目に涙が溜まる前に、私のタルトのいちごをぽかんと開いた口に詰め込む。
安「んむぅ…」
抗議したげな顔で、だけどいちごは味わいたくて。
「んは。お約束。」
安「れもいちごはさいごがええの!」
「最初でも美味いもんは美味いやん。」
安「ん…おいひい…」
困り眉の間によったシワを人差し指の腹でグリグリすると、「もー!」と鼻を摘まれる。
コロコロ変わる表情に、頬が緩む。
仏頂面は作ってない。笑いたくない訳やない。感情を大きく出すのに、多分人より体力がいるだけ。
やけど、オマエといるといつの間にか笑ってる。
家帰ったら表情筋疲れてんねん。
安「もー、すば子いじわるせんといて!いちご取らんといて!疲れたら道に座り込むんもやめて!試着した服たたみ方わかれへんかったら店員さんに聞いて!」
「文句ばっかり言うなや。それに、安子やったらええやろ。」
安「なんなんそれ?」
「許してくれるやん。」
安「…あは、確かに。そうやないとすば子ちゃうもんなー。」
「せやろ?」
安「胸張るとこちゃうけどな!
…なー、すば子はないん?」
「ん?」
安「安子に直して欲しいところ、なんかないん?
いっつもお任せやとわかれへんやん。」
「んー…」
「…」
「…ないな。」
「オマエは、生きとったらそれだけでええわ。笑」
安「なにそれ笑。」
「私ら、ずっとこのままやったらそれでええわ。」
安「…安子もー!生まれ変わっても仲良しがええな!」
「なんやそれ笑。」
安「来世キノコやったら、すば子のとこまで胞子飛ばしたるわ。」
「…私もキノコなってへんかそれ?」
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作者名:らむ倉 | 作成日時:2020年10月23日 23時