【路地裏の百物語】【CS】ないしょの2月の駅。

ニ廻目/お礼を伝えたい【如月絲】 ページ9

「ちょっと、あんまり勝手にうちの会社に入っちゃダメじゃないか！」
「…ごめんなさい。」

なんで、いとが怒られなきゃいけないの。




「…いと、新しい料理の本を買いたいの。お金がもらえる依頼、ある？」
「ありますよ。いとちゃんでもできそうなのが。」

ボロ屋。
いと…きさらぎ駅の、如月絲は、沢子さんに相談をしていた。
前に駅に来てくれた人に教えてもらった、料理本、という本。それが、いまとってもほしい。

沢子さんに依頼をみっつ、並べてもらう。
いとは、それをじっくり見る。喋る猫…動物って、あんまりわかんない。それに、おかねももらえない。像に手を振った…なんだか、平和を乱しちゃいそう。いと、むきぶつは好きじゃない。

「じゃあ、この真ん中の…お礼のやつ、やります。」
「わかりました。まず、依頼主さんに会ってきてくださいね。場所は＿市の＿＿＿コーポレーションです。」
「…はい、いってきます……！」


そして、冒頭に戻る。

「まあまあ、課長。この子も悪意はないんでしょうし…」

やわらかい笑顔で、隣にいるお兄さんがおじさんの課長…？を宥めようとしている。
ここは、会議室…という所らしい。うけつけ、を無視して入ったらいと、捕まっちゃった。

「…ボロ屋…あのっ、Nさん…Nさんに用があったんです！」

めをぎゅっとつぶって言う。
恐る恐る目を開くと、課長？の人が、N…とつぶやく。

「ああ、中村か？この部署のNっつったら、中村しかいないよな？」
「そうですね。お嬢さん、中村先輩に用があったんすね。課長、案内しちゃいます。お嬢さん、こっちですよ！」

急に空気が軽くなり、酸素が肺のいっぱいに入ってくる。課長、の人も少し笑っている。
さっきのお兄さんがいとを手招きするので、着いていく。

「中村先輩！この子が、先輩に用があるって言ってるんすけど…」
「…あ、もしかしてボロ屋の子？」

パソコンに向かっていた、黒くてつやつやの髪をポニーテールにした女の人が、こちらを振り向く。
綺麗な人。大人っぽくて、前髪を横分けにしているのがとっても似合う。

「はい。えっと、如月絲、って言います…。」
「絲ちゃんね。ふふ、よろしく。あ、凜太朗く…じゃなくて、乾くんはもう戻って大丈夫よ。案内してくれてありがと。」
「はい！じゃあまた！」

あ、お兄さん、さっきより笑顔明るい。
…じゃなくて、中村さん…に話を聞かないと。

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