【路地裏の百物語】【CS】ないしょの2月の駅。

ランダム任務/かくれんぼでも【如月絲】 ページ27

コン、コン、コン。
学校のトイレに、ノックの音が響く。

「…＿＿＿さん、＿＿＿さん、いらっしゃいますか。」



「…かくれんぼ？」
「そう、かくれんぼ。絲ちゃんも遊ぶ人がいなかったら退屈でしょう？」

昼下がり、少し静かなボロ屋にて。
いと…如月絲は、景さんに話を聞いていた。

「…確かに。うん、いと、遊びに行きたい…任務も、解決。一石二鳥。」
「うんうん！じゃあ、詳しいことはここに書いてあるから、都合が合う日に行ってあげてね。なるべく早く。」
「…はい、いってきます。」

景さんに一礼して、自室に向かって歩く。床がわずかに軋む。
地図、どこに仕舞ったっけ。にしても、会うの楽しみだなぁ。
自室の扉に手をかけ、中に入り、任務に使う道具の入った箱を漁る。

「地図、あった。場所は…そこまで遠くない。」

消える赤鉛筆で行く学校に丸印をつける。
明日、生徒に混じって入っちゃおう。ばれない、よね。

「…だったら、今日はもう寝て、明日早起きしなくちゃ。」

ぼそぼそと独り言をいいながら時計を見る。七時半。夜の。
…やっぱり、まだはやい。どうしよう。

「…駅に行こう。だれか来たら、おしゃべりしてもらおう。」

ぼんやりつぶやき、ベッドに座って浮いていた脚を床につけ、自室から出た。



サー…と静かな音で雨が降る、きさらぎ駅。
遠くから、電車の音がする。みれば、雨もすっかり止んでいる。

「…！お客さん、」

プァーーー、と何とも言えない大きくて少し間抜けな音が電車からすると、ぷしゅう、と音を立て電車は止まった。

「…え、なにここ！みたことない、うけるんだけど！」
「それなー。ってか、え、あなたひとり？なんか知ってる？」

メイクを適度に施し、制服を少し着崩し、おそらく使えないであろうスマホを握った女子高生(たぶん)がいとに近寄ってくる。
やわらかいバニラの香りがその人たちからは香っている。

「…え、と…ここは、いとのお家、なの。…それで、えっと…」
「あはは、慌てなくていーよ。あたしアミ。で、こっちはサヤカ。」
「サヤカだよ〜。ふふ、見れば見るほどこの子かわいーね、アミ！」

ぐいぐい来る、アミさんとサヤカさん。優しそうで良かった。
あんまりこういう人とお話したことないかも。すこし、楽しみ、かも。

「…なまえは、如月、絲、っていうの。…ここじゃ話しにくいから、駅長室、いこう。」
「おけまる〜！ちょーミステリアスでテンション上がるわ、綺麗だし！」

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