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「ハァ....」
宮崎キャンプも終盤。
今日も良い天気。
だけど私の心は雨模様だ。
誠司さんとはあの打撃練習の後一度も口を聞いていない。
結局、誠司さんがどういう意味でごめんね、なんて言ったのか知りたくても知るのが怖くて。
誠司さんとなるべく会わないようにしている。
とんだ臆病者だ。
「「はぁ...」」
誰もいないと思っていたブルペンの裏で人に見られないようにため息をついたつもりだったのに、誰かとため息が重なった。
近くにいた人影に思わず声が出た。
「あれ、高橋くん?」
12「あっ、あの、えっと、白石さん、お疲れ様です。」
私と同時にため息をついたのはまさかのドラ1ルーキーだった。
「ごめんごめん、驚かせちゃったね。誰もいないと思ってた。」
12「お、俺もです。偶然ですね。」
「どうしたの、ため息なんかついて。まあ、私もだけど笑」
12「いや、えっと、その....いろいろと自分に苛立っちゃって。」
そう言って、肩を落とす彼は、ブルペンで思ったように投げられず落ち込んでいるらしかった。
「高橋くん、毎日頑張ってるよね。大丈夫だよ、結果もちゃんとついてくる。」
私に言ってあげられることなんて無いけれど。少しでも気分が上がればなんて。
12「白石さんに、そう言ってもらえると嬉しいです。」
「私なんかでよければいつでも。」
12「菅野さんが言ってました。白石さんは本当にすごいトレーナーさんでみんな頼りにしてるんだって。」
「智さんが?笑恥ずかしいな、なんか。」
12「あの、白石さんはどうして、こんなところでため息ついてたんですか?」
「あ、はは、私も自分にいろいろ苛立っちゃって。」
誠司さんの悲しそうな瞳を見て、それ以上聞くのが怖くなってしまった。
誠司さんを避けて。
ルーキーまでに気を使わせて。
最悪だ。
12「えっと、じゃあ...きっと大丈夫です。結果はついてきます。だって、白石さんは毎日頑張ってるから。たくさん。」
「ふふ、ありがとう。元気出た。」
誠司さんと面と向かって話せる?
臆せず聞ける?
わからない
だけど、毎日ガムシャラに向き合ったら何か変わるかも。
ルーキーからもらったエールは私の心の中でじんわりと温かく溶けていった。
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作者名:ジャス | 作成日時:2019年2月7日 8時