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『ごめんな、A』
頭の中でグルグルするのは誠司さんのあの言葉。
『あの頃』って一体いつのことなんだろう
私の一番最初の記憶は2歳か、3歳くらいの時。お父さんは根っからのジャイアンツファンで。家族全員でジャイアンツを見に球場に行った。
お父さんが大きいクレープを買ってくれて、なんか選手とかとハイタッチとかできて、大きい手で頭を撫でてくれて。
詳しくは思い出せないけれどとにかく楽しい記憶。
小学校低学年の記憶はうっすらとある。
友達と遠足に行ったり、運動会のかけっこで一位になったり。
だけど、小学校高学年の記憶は驚くほど少なく、中学生の記憶はぽっかりと抜けている。
母さんは、あまり私の記憶については話したがらない。
ただ、知っているのは私は中学3年生の時に事故にあった。
生死の境目をさまよって、命は助かったけど事故で頭を強く打ったせいで記憶が混乱しているのだと。
高校生からの記憶はちゃんとある。地元の高校を出て、ずっと好きだった野球に関わる仕事がしたくて大学ではスポーツトレーナーになる勉強をした。
念願のジャイアンツのトレーナーになれた。
だけどあの頃の記憶は今でも私の中には無い。
誠司さんの『あの頃』がもしも、ずっと昔の話だったら?
私の消えた記憶の中にもし誠司さんがいたのなら?
誠司さんがいう「あの頃」っていつ?
私は、何を忘れてるの?
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作者名:ジャス | 作成日時:2019年2月7日 8時