キミの夢を見ていた (ページ5)

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カキーン

カキーン

ファンの人も帰ったバッティング練習場に響く音。

聞いてるこっちまで気持ち良くなってくるような快音だけどそろそろやめさせなきゃ、明日に響く。

「誠司さん。」

２２「えっ、びっくりした。なんだ、Aか。」

「なんだとは失礼な。みんなもう帰っちゃいましたよ。辛抱強く待ってた女の子達までもが。」

２２「そっか、悪いことしてもーた。明日、サイン書いてあげんと。Aはどうしてまだ残っとんの？」

「帰ろうかと思ったら、首位打者さんのバッティング練習の音が聞こえたので笑。」

２２「からかわんといてや笑。せっかく来てくれたのに悪いけど、もうちょっと打ってくから、先に帰ってて。」

誠司さんは、いつも優しいけれど。

5年経っても、私との間に壁を築かれているような気がしてならない。

慎吾みたいにフランクに接してとは思わないけれど。

トレーナーとしてはもう少しいろいろ相談してほしい。

「いえ、お付き合いします。だって同郷の後輩ですから！」

そう言うと、誠司さんは目を見開いて固まってしまった。

「あれ、私なんか変なこと言いました？」

２２「いや。大丈夫。今日はもう終わろっか。明日も練習あるしな。」

「はい。」

誠司さんはあまり目を見て話してくれない。

心の距離が、現実の距離より遥かに遠く感じます。