玖 ページ9
肌着を羽織り、着物を着るまでは上手くいった。
ただ…
｢え、帯ってどうやって結ぶの｣
今の記憶はないのに昔の記憶が蘇る。
小学生の時に行った夏祭りも
中学生の時に行った夏祭りも浴衣を着た。
帯は…どうだったっけ。
外で待つあの仏頂面を呼んだら…やってくれるだろうか。
嫌な顔をされるのは間違いないが、ダメ元だ。
｢望くん｣
『……なに？』
襖越しの会話はやや声がくぐもって聞き取りづらい。
｢帯…結び方分からなくて。結んでくれない？｣
数秒の沈黙がある。
向こうの彼はどんな表情をしているんだろう。
そんなことも分からんのか、と鬱陶しそうに
顔を歪めているんだろうな。
『はぁ…後ろ向いとけ、開けんぞ』
慌てて言われたとおりに後ろを向いた。
何故かわからないけど同時に目もつぶってしまう。
襖の開く音がして、中に人が入る気配。
別に裸を見られる訳でもないのに少し恥ずかしい。
ぴったりあたしの後ろで止まった望くんが帯を手に取る音がした。
ふわっと香った、秋の匂い。
秋の夕暮れの少し寂しく、甘い香りが鼻腔を通る。
香水だろうか。
それにしては弱い気もする。
人工的でもないが自然のものとも思えず、不思議だ。
『できた。行くで』
｢あ、ありがとう｣
すご、はや。
旅館で働いているだけあって、やはり手慣れている。
あたしもいずれは自分で巻けるようにならないと。
どこに行くのか全く告げられず、前の大男はスタスタ歩いていく。
あたしは見失わないよう、そして着物の裾を踏まないよう
ステップを踏みながら一生懸命ついて行くしかなかった。
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はのん(プロフ) - カジャさん» すごいです！1話でもめっちゃ嬉しくて興奮してしまいました！！ありがとうございます！！！ (2022年10月4日 21時) (
レス) @page50 id: eb6042d99a (このIDを非表示/違反報告)
カジャ(プロフ) - はのんさん» 全く考えていなかったため、このように1話のみとなってしまいましたが…リクエスト、ありがとうございました。 (2022年10月4日 15時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
はのん(プロフ) - そんな風に言っていただいて嬉しいです！望くんと濱ちゃんのその後を書いて欲しいです！ (2022年10月3日 18時) (レス) id: eb6042d99a (このIDを非表示/違反報告)
カジャ(プロフ) - はのんさん» 応援ありがとうございました。はのん様の言葉がとても力になりました。その後、というのは望くんサイドでしょうか？それとも夢主と流星とのお話でしょうか？ (2022年10月3日 14時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
はのん(プロフ) - 全部読ませていただきました！終わってしまって寂しいです。もしよければ、その後どうなったかのおまけ的なの書いてほしいくらいです！ (2022年10月2日 21時) (レス) @page49 id: eb6042d99a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カジャ
| 作成日時：2022年9月11日 21時
