【降谷零】走り屋なんて嫌いです Ⅱ (ページ43)

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少し早いクリスマス1 ページ43

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証人のサインも頂き、雑談を楽しめば17時を回ろうとしていたのでそろそろ帰ろうと立ち上がる。

「毛利先生、時間も時間なので僕達はそろそろ失礼します」

「そうか、今日は雪降るみたいだから気をつけて帰れよ」

「気をつけて帰ってくださいね。あ、そうだ。はい、一応傘持って行って下さい」

「ありがとうございます、ポアロのバイトの時に傘お返ししますね。では」

立ち上がり軽く頭を下げ、コートを羽織ってから事務所を後にした。外へ出るとひんやりとした風が吹いて、身を縮こませる。その時、小五郎が言っていた通り雪が降ってきた。通りで冷えるわけだ。彼が傘をさして直ぐに彼の暖かい手が自分の冷たい手を包んでくれる。街中で手を握って歩くなんて珍しいと感じながら、手を握り返し歩き始めた。

『毛利先生、気さくでとってもいい人ですね』

「そうだな。証人の話が出た時に《お前の師匠兼ね父親だからな》って言ってくれたんだ」

『へぇ』

「驚いたよ。潜入捜査の為にやってた探偵だけだったのに、そんなふうに思ってくれていたこと」

『零さんのこと大切に思ってくれている人なんですね』

「そうだな、俺も大切に思える人が増えてる気がする…変な感情は持たないで仕事のためって割り切るつもりだったのに…」

『え？』

「……また後で話すよ」

『うん』

彼が呟いた言葉に思わず反応して、視線を彼に移すと何処か影のある表情をしていた。自分はまだ彼の事をほとんど知らない。今の言葉はきっと彼が抱えている物を思っての言葉だろう。後で話をしてくれるというので、それまでは深く追求せず待っていよう。

「この後、結婚指輪見に行かないか？」

『…え、いいんですか！』

「ああ。それと…終わったら町中のイルミネーションでも見に行こう。19時からホテルのレストランと部屋を予約してあるから『え、え？』」

「ちょっと早いクリスマスデート。当日は一緒にいられないから」

『きっ、急すぎです』

「だめか？」

このまま家に帰るとばかり思っていたのに、彼の提案には驚いてしまった。少し早いクリスマスデートという言葉に、いつも急だとため息が出てしまう。クリスマスデートに来るとわかっていたら、新しく買った服を着てきたのに。それでも彼の気持ちは嬉しくて手を強く握りながら静かに頷いた。

「それなら行こうか」