【降谷零】走り屋なんて嫌いです Ⅱ (ページ31)

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決意ページ31

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仕事を終えて、くたくたになり家に帰ってきた。鍵を開けて中に入るが部屋はくらいままだった。家の中が暗いのはいつもの光景だが、今日は特別不安を抱いている。

ため息をつきながらリビングに入り電気や暖房をつける。今日は余計なことを考えないためにがむしゃらに働き、かなり疲れてしまったので夕食を作るのが面倒に感じた。ソファに深く腰掛けながらテレビをつけると、例の事件についての報道がされていた。

ボーッとしながらテレビをみていたが、彼が関わっている事件の事で心配になっていたら身が持たないなと改めて感じる。慌ててはいけない、信じて待つことも警視の妻となる予定の自分の役目だろう。そう考え無理矢理気持ちを入れ替えると、今日はもう寝ようとご飯を食べずにお風呂に入り、冷たいベッドに潜り込む。ベッドが少しずつ暖まるにつれて眠気もありその日は眠ってしまった。

朝、目を覚ましスマホ見るが連絡はなかった。スマホを見つめたままアルバムを開けば三週間ほど前に行き、渓谷で撮った写真を見る。思わず笑みが溢れる。

(写真撮っておいてよかった)

気持ちが楽になったところで、ベッドから起き上がり身支度を整えてから弁当や朝食の準備をしていた。彼が戻ってきたら弁当をつくってほしい事をお願いしよう、そんなことを考えつつ弁当を作り終えた。その時、玄関のドアが開く音がした。

『…………！』

帰ってきた事がわかり、慌てて玄関に向かう。

『零さん！』

「ただいま」

『その怪我…』

「かすり傷だ。莉子、悪いが今日は着替えを取りに戻っただけなんだ。今日はポアロでバイトで直ぐ行かなきゃならない」

『そう……なんですね。ご飯は？』

「食べてる暇ないからいらない。あと、また暫くは帰れないと思う」

『そっか…わかりました』

そう言い残し慌ただしく寝室へ向かう彼の背中を見つめた。普段と違いピリピリとした雰囲気を漂わせていた。あれだけ大きな事件だったのだ。それに彼の立場上、抱えている物が大きいのだろう。自分が何をいっても気休めにすらならないだろう。リビングに戻り朝食を食べようと並べていたら彼がリビングにきた。

「莉子」

『零さん？』

「必ず帰るから」

『うん、気をつけて…』

名前を呼ばれて振り返れば、私服に着替えた彼に強く抱き締められた。彼の匂いに交じりツンと消毒の匂いもする。こちらが抱き締め返す前に彼は離れ早々に家を出ていってしまった。

『いってらっしゃい』