【降谷零】走り屋なんて嫌いです Ⅱ (ページ22)

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月日は経ち、暑さも随分と和らぎ秋らしく過ごしやすい季節となった。

10月中旬。
現在莉子は引っ越しのための荷物整理に追われていた。物は極力置かないようにシンプルな部屋にしていたつもりだが、こうして荷物整理をしていると物の多さを感じる。彼は手伝えるときに手伝いに行くといっていたが、忙しいのは重々承知していたため彼に頼らず、仕事終わりや休日を使い、一人黙々と作業をこなしていた。しかし、片付けているとどうしても懐かしいものがでてきて見てしまうものだ。莉子は高校時代のアルバムを見つけ、懐かしさから時間を忘れて眺めていた。

「莉子」

『ふふ、懐かしいなぁ。みんな元気かな…』

「おい、莉子」

『わ！！零さん！？』

「何やってるんだ、全然進んでないじゃないか」

『ちょっと高校時代のアルバムを見つけちゃって。というか、今日は仕事じゃないんですか？』

「みたいだな。さっき帰ってきたから手伝いにきた」

『さっきって…寝てから来てくださいよ。ここに隈できてます』

午前11時を過ぎ、名前を呼ばれた。しかし、アルバムに夢中になっていた時であったため、気付かなかったものの、2度目に呼ばれてハッとして振り向くと私服に身を包んだ彼がしゃがみこんでいた。彼の顔を見つめると薄く隈が出来ており、仕事終わりに来たのとのこと。親指で隈を撫でながら、体を休める事よりも、引っ越しの手伝いをしにわざわざ自宅へ来てくれた事に嬉しく感じる。しかし────

「気のせいだろ」

『まずは寝てください』

ここに来てくれたことは嬉しいが、まずは体を休めることが先なので自分のベッドの布団を捲るなり寝ることを促す。

「わかったよ。莉子もおいで」

『うっ…』

寝ることを受け入れてくれたようだが自分も誘われてしまった。彼のそのお願い対して嫌と言えなく、誘われるがまま自分の狭いシングルベッドに寝転がる。自分を軽く抱き締めながら、疲れていたのだろう目をつむった彼は直ぐに寝息をたてて眠ってしまった。

『疲れてるのに、来てくれてありがとう…おやすみなさい』

彼が眠って少しすると、寝返りを打って自分から腕を放したので、自分は彼から離れて布団をかけ直してあげる。サラサラの髪の毛を撫でながら、子供を寝かしつけるために添い寝をした親になった気分だ。

彼が起きるまでは少し時間がかかると思うので、起こさないように部屋の片付けを再開した。