三十八、若し車を運転出来たら ページ46
「あーあ、免許欲しいなぁ」
「えっ?」
突然謎の呟きを発したA。
「何で?」
「だってさ、移動に便利だし、カッコイイじゃん」
「そう?」
と言われ、車だけじゃなくヘリコプターも運転出来る潤一郎は、少し嬉しそうだ。
「例えばさ・・・」
*
「如何しましょう。寝坊した上に雨まで降ってきましたわ・・・」
プリーツスカートを翻して一生懸命走る。
走るたびに靡く黒髪が美しい。
空はどんより曇り模様、パラパラと雨が降り出して来た。
少女は傘を持っておらず、鞄の中にも折り畳み傘は無い。
段々と強くなってくる雨。
制服が水分を含み、さっきよりも重くなっているような気がする。
走る度に水が跳ねる。
ジックリになったソックスが気持ち悪い。
水が滴る髪が肌に張り付く。
雨が降ってなお走り続ける健気な少女の元に、この場に相応しくない黒塗りの車が現れる。
見るからに高級なオーラを醸し出している。
車の窓がゆっくり開く。
「水も滴る麗しきお嬢さん、良かったら目的地までお送り致しますよ」
サングラスを外し、雨に打たれた少女を見つめた・・・。
*
「ほら、ね」
「否、明らかに不審だよ!?見ず知らずの人にそンな事されたら、ときめきより恐いよ!」
そう言うと、不機嫌な顔をするが、
「えぇ、じゃあ此れは・・・」
また新しい何かが思いついた様だ。
*
「・・・」
約束の時間まであと数分しかない。
自分から約束を取り付けておいて遅刻だろうか。
待ち合わせ場所の近くにある時計を又見てしまう。
此れで何回目だろうか。
この場所に着物はとっても浮く。
ボーっと道路を見つめていると、淡い色をした車が目に入る。
「やっと来た」
自然と頬が緩んだ気がした。
「御免ね。ご麗人に道案内してたら遅くなっちゃった」
「いい、最高記録よりはまだまし」
「そう」
こっち側に回って、ドアを開けてくれた・・・。
*
「此れならまだいいね」
「でしょ、でしょ」
今度は満足そうに頷く。
「出てきたのって、ナオミと鏡花ちゃん?」
「友情出演だよ。
ホントに免許欲しいなぁ。お金の心配は無いんだけど、時間がねぇ・・」
「ボクなら、出来るンだけどなぁ・・・」
「ん?何か言った?」
「何でもないよ」
優しく微笑んだ彼が格好良く見えたのは何故だろう。
不思議に思いながら、ココアを啜った。
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麗(プロフ) - 10ページ 読んでみる ではなく 呼んでみる ではないでしょうか? (2021年4月13日 0時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
柚湯(プロフ) - みほさん» すいません。そういう仕様と思ってください。ちょこちょこ直したので違和感が少なくなっているといいのですが・・・。 (2018年2月14日 2時) (レス) id: c8fb7ba279 (このIDを非表示/違反報告)
柚湯(プロフ) - 凰朧月鬼華さん» 改行を増やしてみました。見やすくできるように頑張ります。 (2018年2月14日 2時) (レス) id: c8fb7ba279 (このIDを非表示/違反報告)
柚湯(プロフ) - 塩キャラメルさん» 遅くなりすいません。少し空白を入れ、改行を加えてみました。少しは見やすくなったでしょうか? (2018年2月14日 2時) (レス) id: c8fb7ba279 (このIDを非表示/違反報告)
みほ - 句読点の入れ方が独特ですが、そう言う仕様なんでしょうか?読んでいるときに引っ掛かって違和感があったので…。わざとそうしているのであればすいません。 (2018年2月8日 17時) (レス) id: 605cea03c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚湯 | 作成日時:2016年12月11日 4時