【文豪ストレイドッグス】女性博愛主義の彼女

三十三、何気ない一言で諍いは起こる ページ39

「椿さんって、嫌いな女性とか居ないんですか？」
ナオミから差し出されたフォークに口を開けるA。
モグモグと口を動かし、呑み込む。
「嫌いな女性と言うか、苦手なタイプは居るよ」
「「えっ」」
敦と潤一郎の声が揃った。流石東西のヘタレ。
「どんな女性も寛大に受け入れる私だけどね、グイグイ来るタイプは少し苦手かな。
同世代なら良いんだけど、年上で初対面の人だとねぇ・・・」
ふと、思った。其れって何時もAの事じゃないか？と。
「色んな人にちょっかい出して、復讐とか受けた事ないのですか？」
「まっさかぁ、あの包帯グルグル心中女性巻き込み機じゃないんだから」
Aが言った、包帯グルグル心中女性巻き込み機とは、ご存じの通り太宰の事。
「でも、一回刺された事はあるよ」
サラリと、とんでもないことを言う。
「そンな事聞いてないよ！！」
勢い良く椅子から立ち上る。
「言ってないからね。聞かれてもないし」
「何時！？」
「高校時代で、まだ潤一郎君と出会って無い頃だから、知らなくて当然」
自分のゼリーを掬って、ナオミに差し出す。
「あれ？同じ学校じゃないんですか？」
「うん、違うよ」
「其れよりも、Aちゃん話して貰おうか・・・・」
「えぇ、何で。過去を振り返っても良い事何て一つも無いよ。
其れに命に影響無かったし、与謝野先生いるから、何回瀕死になっても大丈夫だもん！」
「君は、女性の柔肌に傷付ける真似はできないな、とか言う前に自分の体も労わるべきだよ！」
段々ヒートアップしてきた二人。
「しゅ、修羅場・・・」
言い争いをしている二人を見て、敦は呟く。
「この前だって、ナンパしてたじゃないか！」
「あれは、道に迷ったから、手っ取り早く聞いただけじゃない！
私は、女の子を泣かしたことは大体無い！」
「刺された人がよく言えるね！」
「刺すつもりは、無かったのよ。威嚇だっただけ！」
「如何して、危害を加えられたのに、君は庇う？」
「私は、女の子に手は出さないの。穏健派だからね！
ナオミを傷つけたね？とか言って、女性を殺しかけた人とは違うんですぅ！」
樋口のことを言っている。
「君だって大切なもの傷つけられたら、容赦しないだろう！？」
「殺しはしない。半殺しにして、死なない程度に苦痛を与えるだけだもん！」
其れは、いっそ止めを刺した方がいいと思う。
睨み会う二人。さっきと打って変わって一言を発さない静かな空間が逆に恐ろしい。
今にも一触即発しそうだ。
こんな時は周りが何かをやるだけ面倒くさい事になるので、黙って見届ける事にした。

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