バレンタインデー ページ35
「潤一郎君や、チョコだよ」
お婆ちゃんみじた口調で、ラッピングされた箱を渡された。
「ありがとう」
少し照れくさい気持ちになる。
「ナオミちゃんにも、チョコをあげよう」
自分と少し違うラッピングが施させた箱を渡している。
うん、分かってたけどね!
*
「兄様、Aさんから貰ったチョコ食べましたか?」
昼食とのことで、一階の喫茶店へ来ている。
「いや、まだだけど」
「とっても美味しかったですわ。去年は凄かったですわね・・・」
「あぁ、あったね」
スッと目を細めて、去年の事を思い出す。
仕事が終わりに、寮に戻ると、存在感を放っている、150〜160
玄関の前に置かれていた。
何だろうと、箱に近づくと甘いチョコレートの香り。
開ければ、精密に作られたナオミ像。
一瞬、言葉を失い、凝った像を数分位凝視してしまった。
「あれ、食べるの大変でしたわ」
目を閉じて、溜息を吐いた。
「今年もあるのかな・・」
「Aさん曰く、今年は鏡花ちゃんらしいですわよ。
兄様も欲しいなら、頼めば上半身位作ってくれますってよ?」
「いや、自分を食べるのは、一寸・・・」
*
「疲れたぁ・・・」
仕事が終わったらしい。
フラフラと歩き、机に顔を伏せる。
「お疲れ様、大丈夫?」
「何とかね、ちゃんと鏡花像は設置してきたよ」
伏せた顔を上げ、キリッとし、親指を立てる。
キリッとした後、やっぱり疲れたのか、また顔を伏せる。
今の時刻は定時近く、ほぼ社員が残っていない。
「あっ潤君。チョコの匂いする」
と言って、潤一郎に後ろから抱き着き、シャツに顔を埋める。
何時もしない事をされると、ビックリする。
こそばゆい。
「さっきAちゃんのチョコ食べたからかな?」
「美味しかった?」
「うん、ナオミも褒めていたよ」
「そっか。ねぇ、もう少しこうしてても良い?」
「う、うん・・・」
疲れた時は誰かに抱き着きたくなるらしい。
頬が熱くなっていくのが自分でもよく分かる。
*
「鏡花ちゃん、ちょ、チョコレートの像だよ!?誰が作ったのかな!?」
「考えなくても、分かる」
確信した目で、細かく作られた鏡花像を見つめた。
鏡花像はちゃんと何日か、掛けて美味しく頂いたそうだ。
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麗(プロフ) - 10ページ 読んでみる ではなく 呼んでみる ではないでしょうか? (2021年4月13日 0時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
柚湯(プロフ) - みほさん» すいません。そういう仕様と思ってください。ちょこちょこ直したので違和感が少なくなっているといいのですが・・・。 (2018年2月14日 2時) (レス) id: c8fb7ba279 (このIDを非表示/違反報告)
柚湯(プロフ) - 凰朧月鬼華さん» 改行を増やしてみました。見やすくできるように頑張ります。 (2018年2月14日 2時) (レス) id: c8fb7ba279 (このIDを非表示/違反報告)
柚湯(プロフ) - 塩キャラメルさん» 遅くなりすいません。少し空白を入れ、改行を加えてみました。少しは見やすくなったでしょうか? (2018年2月14日 2時) (レス) id: c8fb7ba279 (このIDを非表示/違反報告)
みほ - 句読点の入れ方が独特ですが、そう言う仕様なんでしょうか?読んでいるときに引っ掛かって違和感があったので…。わざとそうしているのであればすいません。 (2018年2月8日 17時) (レス) id: 605cea03c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚湯 | 作成日時:2016年12月11日 4時