＊ ページ39
ねぇ、何で。
出てくるのは、そんな言葉ばっかりだ。
私の事が大事なんて、何で、そんな。
『…何でよ。私が桃原苛めてたって聞いたんでしょ』
「…うん。聞いた」
『…なら、何で…』
「うん？」
『…何で。私より桃原の方が可愛くて良い子そうでしょ。私、口悪いし』
「夏瀬今日何でって聞いてばっかりだね」
っていうか可愛いかどうかって関係なくない？
怪訝そうに呟いた後、スガちゃんは笑った。
さも当然、とでも言いたげに、笑った。
「夏瀬がどうっていうより、夏瀬だから」
「夏瀬だから、信じたい」
俺、これでも人を見る目はあるからさ。
そう言ってニヤリと吊り上げられた口元に、聞き覚えのある台詞に。思わず目を見開いた。
ーーいつかの日、軽口の応酬の中交わした台詞。
スガちゃんが私を見る目は、あれから何も変わっていなかった。
…痛い。
何かを耐えるように、頬の内側をきゅっと噛む。
胸を抉るような、心臓を鷲掴みにされるような。
どこにあるかも分からない心を、容赦なく揺さぶるような。
切なくて、でも眩しくて。
泣きたくなるような、鮮やかなーーー痛み。
やっぱり、優しさは痛い。
瞼に滲んだ熱を誤魔化しながら、そっと考える。
いいのだろうか。
ーー伸ばされた手を掴んでも。
青城の皆の手を取ることはできないくせに、それでもただ、苦しくて。
こんな半端な私が、この一時の合間だけだったとしても、彼の優しさに縋って良いのだろうか。
顔を上げて隣の彼を見る。
こちらを真っ直ぐに見据えるその双眸は、逃げる事すら許してはくれなくて。
『…いいの』
「ん？」
『私、白鳥沢の人からめちゃくちゃ嫌われてるから、私を庇ったら白鳥沢敵に回すことになるかも』
「いいよ。元々ライバルだし」
『苛め…られるかも。スガちゃんが怪我なんかしたら、私どうすればいいの』
「そんなん夏瀬のせいじゃないでしょ。でも、そんなに心配だったらできるだけ一人にならないようにする」
『…私から、烏野の人達を遠ざけたのに？』
「夏瀬が自分を守ろうとしたって言うなら、それならそれでいいよ。そんな夏瀬を守りたいって思うから、だから別にいい」
立てた膝に再度顔を埋めた。
唇を噛み締めて、噛み締めて。
そうして一粒だけ、涙を溢した。
泣きたくて、泣いてしまいたくて、でも泣けなくて。
…この合宿で、初めて流した涙だった。
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雨音(プロフ) - @ あのせ。さん» わわ、嬉しすぎるコメントありがとうございます(≧∀≦)とりあえずハンカチどうぞ！！そして存分にイライラをぶつけてくださいませ！笑 じゅ、10回！？思わず笑っちゃいました(*´∇｀*)熱量が伝わってきてとっても嬉しいです！ありがとうございましたT^T (2023年1月13日 15時) (
レス) id: 9d08cd299b (このIDを非表示/違反報告)
@ あのせ。 - 感情移入しすぎてめっちゃ泣きました(泣)早く桃原殴りたいです（やめろ）とりあえずあと10回は見直してきますっ！ (2023年1月12日 10時) (レス) @page35 id: 928e357de3 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - あずきさん» あずき様!!二度もコメント下さってありがとうございます(≧∀≦)続編ありがとうなんて嬉しすぎて泣いちゃう…T^Tそして追いコメントはむしろ作者へのご褒美ですな(๑˃̵ᴗ˂̵)あずき様が気持ちを抑えられなくなるように頑張ります!!! (2022年6月21日 22時) (レス) id: 9d08cd299b (このIDを非表示/違反報告)
あずき(プロフ) - わー！続編ありがとうございますー！気持ちを抑えられずまたコメントしてしまいました！照れ泉さんも男前泉さんもいいですよね。えっと、続編行っても気持ちが抑えられなくなったらコメントしちゃうかもです！続編でも作者様のペースで疲れないペースで頑張って下さい！ (2022年6月20日 23時) (レス) @page50 id: 121db8bbe8 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - atchoさん» 同志…!!マッキーよきですよね(*´꒳`*)♡そしてそして嬉しすぎるコメントありがとうございます(T_T)そろそろお話が動いていくのでまた見てくださるととっても嬉しいです╰(*´︶`*)╯本当にありがとうございました!! (2022年6月2日 21時) (レス) id: 9d08cd299b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雨音 | 作成日時：2022年4月28日 20時
