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『…ちょっと』
突然頭上で聞き慣れた声がして、俺は思わず顔を上げた。
目の前に立っていた人物を目に映すや否や、隠すこともせず舌打ちを落とす。
「…何だよ」
『…いつまでそうしてるわけ?』
「うるさいな、お前に関係ないだろ」
『まぁそうだけど』
「んじゃ消えろ、近付くなよ」
『うわ。落ち込んでると思って見に来たけど相変わらずじゃん』
………“プツン”。
頭のどこかで、何かが切れた音がした。
「…るさい」
『はぁ?』
「…お前もどうせざまぁみろって思ってんだろ!」
今までため込んでいた思いが爆発するかのように、俺は立ち上がって目の前のソイツに怒鳴り散らした。
ただの八つ当たり。少し頭が冷えればそんなのすぐ分かる。だって喧嘩っていっても、こんな風に声を荒げたことなんて、今まで一度も無かったから。
でも一杯一杯の俺はそんなことにも気付かず、ただただ目の前のソイツが苛立たしかった。
抱いた苛烈な感情のまま、鋭い目で睨み付ける。
そんな俺を見て驚いたのかソイツが目を大きく見開いた。
ーーしかし次の瞬間には、それがまるで見間違いだったかのように、すぐに眉を寄せ不快そうに口を開く。
『はぁ?別にそんなこと言ってないじゃん』
「じゃあなんだよ!なんで来たんだよ!!」
『何キレてんの?』
「俺の事なんてどうでもいいくせにこんな時になんだよ!!偽善者ぶってんじゃねぇ!!」
幼なじみの動きが微かに止まった。ほんの小さな動き。端から見れば気付かないくらい僅かな動き。
でも俺は分かってしまった。だって喧嘩ばっかりだったけど、ずっとずっとソイツを見てきたんだから。不本意だけどずっと傍にいたんだから。
そしてそんなソイツを見た瞬間。
…しまった。そう思った。明らかに言い過ぎた。
でも俺はやっぱり面倒くさい奴で、謝らなきゃいけないんだろうけどそれも何だか癪で、ふて腐れたように口を噤んでいる事しかできなかった。
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雨音(プロフ) - コメントありがとうございますT^Tそんな嬉しいことを言って下さるなんて涙が…更新頑張れそうです(*´◒`*)猫様も体調気をつけて下さいね!本当にありがとうございました(*'▽'*) (2022年4月29日 19時) (レス) id: 9d08cd299b (このIDを非表示/違反報告)
猫 - まじでこの作品大好きです‼︎体調に気をつけてくださいね。 (2022年4月29日 11時) (レス) @page2 id: fd92b45f0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨音 | 作成日時:2020年7月25日 1時