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『…どうでもいいよ！！』
目の前のソイツが突然声を張り上げる。今度は俺が目を見開く番だった。
『そうだよ、アンタの事なんてどうだっていい！！』
「はぁ？」
じゃあ何なんだよ。イラッとしてそう言おうとした。
確かに、言おうとした。
…でも。
『ッだけど、らしくないアンタ見てると…』
興奮して大きく見開かれていたソイツの目から、堰を切ったように涙が溢れ出したのを見たら、開いた口からは何の言葉も出てきてはくれなかった。
…泣いてる。
あの、夏瀬が。
必死に両手で涙を拭い続ける夏瀬を、ただ呆然と見つめる。
…ぐしゃぐしゃな顔だった。
我慢したくてもできない。まるでそんなふうに。
取り繕う余裕さえなく、まるで子どものように彼女は泣いていた。
(…なぁ、何で、)
なんで、お前が、おれのことで、
おれのことで、そんなに、必死に、
(なにをーー泣くの。)
頬を伝って溢れる涙が、どこか触れる事を躊躇わせるほど、酷く綺麗なものに思えて。
その瞬間、心のどこかがぐらりと傾いた気がした。
「な、夏瀬…？」
恐る恐る伸ばした俺の手を思いっきり振り払うと、
『うっせー！！ハゲろ及川！！』
なんて怒鳴り散らかして、夏瀬はその勢いのまま体育館を飛び出していった。
小さな背中を見送りながら、呆然とその場で立ち尽くす。届かなかったまま行き場なく空中を彷徨っていた自分の手に気付き、ぎこちない動作で腕を下ろした。
初めて見たアイツの顔。
あの子の、涙。
傾いた心の隙間から少しずつ滲み出てきたのは、戸惑いと、動揺と。あとはーーきっと、紛れもない愛おしさだった。
まさにコペルニクス的転回。
頭をガツンと殴られたような衝撃。
(……今日はもう帰ろう。)
そう思った俺は、ノロノロとボールを片付け始めた。
家に帰って布団に入ってからも、瞼の裏にちらつくのは、嫌いだった筈のアイツの泣き顔ばかりで。
明日アイツに謝ろう。そんなことを思いながら眠りに落ちたその日は、久しぶりにぐっすりと眠れた…ような気がする。
それでも俺はオーバーワークをやめられず、
その日の数日後、岩ちゃんに頭突きと説教のダブルパンチを食らって、今度こそ本当に目が覚めたんだけどね。
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雨音(プロフ) - コメントありがとうございますT^Tそんな嬉しいことを言って下さるなんて涙が…更新頑張れそうです(*´◒`*)猫様も体調気をつけて下さいね！本当にありがとうございました(*'▽'*) (2022年4月29日 19時) (
レス) id: 9d08cd299b (このIDを非表示/違反報告)
猫 - まじでこの作品大好きです‼︎体調に気をつけてくださいね。 (2022年4月29日 11時) (レス) @page2 id: fd92b45f0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雨音 | 作成日時：2020年7月25日 1時
