たまにはいいよね。 ページ11
及川side
「…A」
今まで一緒にご飯を食べていた三人を追いかけるように屋上から出ていこうとする小さな背中に呼びかける。
『何だよ。授業始まんぞ』
「…サボろうよ」
『はぁ?』
「ね?」
真っ直ぐAの目を見つめると、色素の薄い瞳が微かに揺れた気がした。
岩ちゃんも鈍そうに見えて鋭いとこあるけど、俺はAもそうだと思ってる。普段だったら「勝手にサボってろ」で終わりだもん。
フェンスを背にそのまま座り込む。立てた片膝の上に肘をのせ、おいでおいでと手招きすると、Aはため息を吐きながらも大人しくこちらに寄ってきた。Aの重さを受け止めたフェンスが俺の右上でカシャンと音を鳴らす。
『…サボらせた分の代償は高くつくからな』
「ええ〜。まぁいいよ。何がいい?」
『…』
あ、考えてなかったんだ。無言で眉を寄せたAを見て思わず笑いそうになるのを何とかこらえる。
俺の幼なじみはこういう所があるからズルいと思う。普段はふてぶてしいくせに、相手から不意打ちで来られると素直に厚意を受け取ることができないらしい。
可愛いなぁ、なんて口にしたら問答無用で殴られそうなことを思いながら、俺はなんとなしに青い空を目に映しつつ口を開いた。
「…ねぇ、A」
Aがこちらを向いたのが気配で分かったけれど、それには気付かないふりをして言葉を続ける。
「何で……何で、バレー部に入ったの?」
ほんの少しの期待が無意識のうちに口調に滲んでいる気がして何だか恥ずかしくなってくる。まぁ、いいや。それくらいは許して欲しい。
依然として空を見上げながらAの言葉を待っていると、頭上から淡々とした声が降ってきた。
『前も言ったじゃん。はじめちゃんに悪い虫がつかないように見張っとくため』
「………ソウデスカ」
思わず唇を尖らせる。改めて聞いてもAの動機は相変わらず不純だった。
まぁAらしいと言えばAらしい。下を向いて思わずクスッと笑った俺の顔に影が落ちる。再度顔を上げると、いつの間にか俺の前にAが向かい合うようにして立っていた。そのまましゃがみ込んだAの動きを追うように視線を動かす。
……あ、スカートの中見えそう。
こんな時にそんな事を思ってしまう俺は健全すぎるほど健全で、何だか悲しくなってくる。
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雨音(プロフ) - コメントありがとうございますT^Tそんな嬉しいことを言って下さるなんて涙が…更新頑張れそうです(*´◒`*)猫様も体調気をつけて下さいね!本当にありがとうございました(*'▽'*) (2022年4月29日 19時) (レス) id: 9d08cd299b (このIDを非表示/違反報告)
猫 - まじでこの作品大好きです‼︎体調に気をつけてくださいね。 (2022年4月29日 11時) (レス) @page2 id: fd92b45f0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨音 | 作成日時:2020年7月25日 1時