登校 ページ7
その次の日。
一人での登校に慣れようと、私は翔ちゃんの家に寄らないで、そのまま駅に向かうことにした。
家を出てから、たったの数分。既にめげそうな自分に、深い溜め息を一つ。
何故かじわりと滲む熱は、気付かないふり。
「…だめだなぁ」
ぽつり呟いて、足を止めた。
…やっぱり、一人は苦手だ。
「A――!!」
『え、翔ちゃん!?』
私を呼ぶ声と、自転車のブレーキ音。
目を見開く私に、「乗んないの?」と一言、翔ちゃんは笑った。
*
「なんで先行こうとしてたの?」
風に舞う髪を押さえる私に、自転車を走らせながら翔ちゃんが聞く。
『一人での登校に慣れよう大作戦…』
「何だよそれ!」
『翔ちゃん部活入ったら一緒に学校行けないし、それに…』
…昨日久しぶりに嫌なこと思い出しちゃったから、上手く笑える気がしなかったんだよ。
翔ちゃん意外と鋭いし、心配かけたくなかったの。
「ん?」
『…それに、昨日一緒に行こうって約束してなかったし』
「ふはっ、Aは変なところで気を遣うよな〜」
翔ちゃんの優しい声に思わず涙腺がゆるむ。
赤信号で止まった翔ちゃんは振り向いて私の頭を撫でてくれた。
「泣くなよ〜笑」
まだ朝だよ?
そう言って優しく笑ってくれる。
『…泣いてない』
でも、こういう時だけ素直になれなくて。その代わりに翔ちゃんの背中に額をそっと押しつけた。
すぐ泣く癖、直さないとって思うのに。
…私は相変わらず泣き虫のままだ。
『…翔ちゃん、ありがと』
「これくらいなんでもないよ!」
『…翔ちゃん、嫁に来ない』
「うええ!? お、おれ男!!」
慌てる翔ちゃんに自然と笑顔がこぼれる。
…やっぱり翔ちゃんは私のヒーローだ。
『あ、翔ちゃん、あとマネージャーのことなんだけど、』
「おう! どうする??」
『…とりあえず、今はやめとこうかな』
「…そっか!」
…まだ、本格的にバレーに触れる勇気はないんだ。
色んな記憶が、バレーには詰まっているから。
…翔ちゃんには東京での出来事は大まかにしか話していない。
バレーが大好きで、とても優しい、
そんな貴方の重荷になりたくなくて。
ごめんね。ちゃんと吹っ切らないといけないのは分かってるんだけど。
『うん、えっと、でもお手伝いくらいはいつでもするからね』
「おう、ありがとう! …でも無理すんなよ??」
『うん、ありがとう!』
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雨音(プロフ) - 氷雨さん» わわ、めちゃくちゃ嬉しいです…!手直しも更新も早くできるよう頑張りますね(*´-`)コメントありがとうございました(*^^*) (2021年1月8日 14時) (レス) id: 57a2e7dd63 (このIDを非表示/違反報告)
氷雨(プロフ) - すっごく素敵なお話だと思います!これからも頑張ってください! (2021年1月5日 15時) (レス) id: adfa992d1e (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - 美月さん» コメントありがとうございます!!日向くん難しかったのでそう言っていただけてめちゃめちゃ嬉しいです…!これからもキュンキュンしていただけるように頑張るので、また是非ご覧くださいませ!本当にありがとうございました! (2020年3月19日 8時) (レス) id: 57a2e7dd63 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - 日向と国見さん後月島にもうキュンキュンしまくってます、、、!!←これからも頑張ってください!応援してます! (2020年3月19日 1時) (レス) id: 7111f7e46f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨音 | 作成日時:2020年3月15日 18時