い も う と 37 ページ38
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「どうしてってそりゃ...不公平じゃないですか。たるちさんは私が誰だか知ってるのに、私はたるちさんが誰だか知らない、なんて。」
髪の毛をくるくると指に巻き付けながら、少し拗ね気味に答える。
(そんなのズルい。私だけ何も知らないなんて。)
子供っぽいと、思われただろうか。
しばらくの間が開くと、たるちさんは口を開いた。
「...俺はさ、ガッカリさせたくないわけ。」
「...ガッカリ?」
「そ。」
くるくるとしていた指が止まる。
言葉の意味を飲み込むのに、少し時間がかかった。
「俺、リアルとネットの差がすごいからね〜。俺がこんな奴だったんだって、思われたくないし。」
「たるちさん...」
淡々と話すたるちさんだったが、私にはどこか寂しさが感じられた。諦めのような、何か。
「...私は、そういうの気にしないですよ。絶対。」
声をかけなきゃいけない気がした。
「リアルとネットでギャップがあっても、たるちさんはたるちさんです。...少なくとも、私はどんなたるちさんでも好きですよ。」
今まで関わってきた“たるち”さんという存在は、ただリアルとネットの差がすごいだけでガッカリするような人間ではないと、確信があった。
ゲームに真剣で、プレイ中は口が悪いけどゲームに1個1個対して愛を感じる、そんな人。
本当にゲームが好きなんだな、って思わせてくれる...
たるちさんの実際動画を見た私は、そう思わされたのだ。
(ただそんなたるちさんの正体が分からないという...)
本当、私という奴は。
「...Aって、意外と良いこと言うんだね。」
「んなっ?!唐突に失礼ですね!!」
あははっ!!とヘッドセットからはたるちさんの笑い声が聞こえてくる。
私の反応を面白がっているようだか、私は何も面白くない。
(空気変わったし、よかったのかな?)
しばらく私の膨れ顔がディスプレイに反射して映っていたのだが、たるちさんはひとしきり笑い終わったところで、口を開いた。
「...んまぁ、ありがと。俺もAのそういうとこ、好きだよ。」
「...っ!!」
一瞬で顔が朱に染まる。
バッと顔を抑えると熱くなっていることが分かる。
んじゃ、おつ〜と逃げるようにオフラインになったたるちさんに言葉も出なかった。
(サラッととんでもないこと言って去りやがった...!!)
「...あ〜っ、もう!!今のは軽率に惚れるから...!!」
前々から疼いていた何かが動き始めたような、そんな感覚だった。
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雨村(プロフ) - 夢花(仮垢)さん» わわわ!!!本当ですね!!笑なんだか危ない感じに……( 報告ありがとうございます、修正しておきます!! (2018年10月14日 22時) (レス) id: a3cc1f37d6 (このIDを非表示/違反報告)
夢花(仮垢) - 36のとこで、勉強がべんきになってますぞ…最初色んな意味でビビりましたわw (2018年10月14日 21時) (レス) id: 1ce7d18474 (このIDを非表示/違反報告)
雨村(プロフ) - にゃるさん» ありがとうございます…!!最近は更新ペースがなかなか安定しなくて本当申し訳ないです。頑張ります!!! (2018年8月22日 1時) (レス) id: 291ab6483c (このIDを非表示/違反報告)
にゃる(プロフ) - いつも更新楽しみにしています。これからも頑張ってください (2018年8月21日 21時) (レス) id: 1eb7bde713 (このIDを非表示/違反報告)
雨村(プロフ) - 通行人Aさん» ほんとだ!!間違いです、すみません(><)ご指摘ありがとうございます!!修正しておきます。 (2018年8月21日 11時) (レス) id: a3cc1f37d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨村 | 作成日時:2018年7月23日 0時