い も う と 30 ページ31
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「ただ、あこがれの実況者さんが同じ寮に住んでるって聞いて誰なんだろって思ってただけなんです。」
「...んーそういう風には見えないけどなぁ」
いたずらっ子のような表情で私のことを見るいづみさん。
女の人ってみんなこの手の話題が好きだよね、ほんと。
「本当にそれだけですよ。ましてや、顔も分からない人に惚れるなんて...」
そうだ。顔だって知らない。
知っているのは声と、ここに住んでいることだけ。
あとは何もわからない、何も知らない。
「...でも、それだけ必死になって探してるってことは少なくとも気になってるんじゃないのかな?」
お兄ちゃんもいづみさんも、同じようなことを言う。
私はそんなに必死になっていただろうか。
「...正直、分かんないです。ちゃんと誰かを好きになったこととかないので。」
「まあ、相手が相手だしね...」
そりゃそうだ。
相手は現実で面識がある人ならまだしも、一緒に住んでるだけの顔も分からないネットの住民。
__それも、相手は私に顔を知られたくないという。
「もし仮に、私がたるちさんのことを好きだとしても勝機はないですよ。相当バレることを嫌がってますし。」
「んー...?」
ここまでして私にバレることを嫌がっているのだ。
プライベートには踏み込まれたくないタチのひとだろう。
分かってて、踏み込もうとしていた訳だが。
「Aちゃん。」
「はい?」
「私はAちゃんの気持ちにケチつけるつもりはないけれど...後悔のないようにしてね。」
「わかり、ました」
じゃあ、私稽古があるから!と監督さんは部屋を出ていった。
静かになった部屋に、少し寂しさを感じてしまう。
(...分からない。)
乙女ゲームは何作もクリアしてきた。
選択肢を間違えることも、攻略できなかったこともほとんどなかった。
女子の恋心というものは理解しているつもりだった。
そんな私は、“たるちさんに恋をしていますか?’’という簡単な質問に、YesかNoで答えることができないのだ。
酷く、アホらしい。
その人のことしか考えられなくなれば、恋。
その人を見て胸がドキドキすれば、恋。
恋の定義なんて、曖昧なもの。
当てはまるかどうかなんて正直分からない。
(私がそんなことで悩むなんてなぁ)
「はぁ...ゲームしよ。」
私は、気を紛らわせるように、さっきの乙ゲーの続きを始めた。
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雨村(プロフ) - 夢花(仮垢)さん» わわわ!!!本当ですね!!笑なんだか危ない感じに……( 報告ありがとうございます、修正しておきます!! (2018年10月14日 22時) (レス) id: a3cc1f37d6 (このIDを非表示/違反報告)
夢花(仮垢) - 36のとこで、勉強がべんきになってますぞ…最初色んな意味でビビりましたわw (2018年10月14日 21時) (レス) id: 1ce7d18474 (このIDを非表示/違反報告)
雨村(プロフ) - にゃるさん» ありがとうございます…!!最近は更新ペースがなかなか安定しなくて本当申し訳ないです。頑張ります!!! (2018年8月22日 1時) (レス) id: 291ab6483c (このIDを非表示/違反報告)
にゃる(プロフ) - いつも更新楽しみにしています。これからも頑張ってください (2018年8月21日 21時) (レス) id: 1eb7bde713 (このIDを非表示/違反報告)
雨村(プロフ) - 通行人Aさん» ほんとだ!!間違いです、すみません(><)ご指摘ありがとうございます!!修正しておきます。 (2018年8月21日 11時) (レス) id: a3cc1f37d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨村 | 作成日時:2018年7月23日 0時