【幽遊白書】重なることなき世界【飛影】

Story20 ページ22

(何を考えている？)

先程から裕加の様子がおかしい。あまり協調性のない飛影ですら気付くほどだ。間違いなく蔵馬も気付いている。

「くっそぉ！早く、早くしねぇと！」

ぼたんから連絡が入り、螢子が魔回虫に取り付かれた人間達に襲われていると言う。切羽の詰まった幽助と桑原は恐らく裕加の様子に気付いていない。

一言で言えば、心ここに在らず。意識が打倒朱雀に向いていない。

「貴様、そんな状態で戦えるのか？」
「…えっ」
「そんな状態で戦えるのかと聞いている」
「…ごめん、大丈夫」

我に返ったようだがどこか不安が残る。だが、今は隣の女より眼前の敵が最優先だ。意識を朱雀がいるであろう塔へと向ける。すると、塔の入口付近から何かが出てきた。

「な、何だ？あいつら」
「養殖人間だよ」
「養殖人間って何だぁ？」
「人工生命体。思考能力も意思もなく痛みも恐怖も感じない、生きた人形みたいなもの。恐らく白虎と玄武の食糧だよ。」

養殖人間について説明している間もわなわなとそれは湧いてくる。

「面倒くせぇや！俺のショットガン式霊丸百連発で粉々にしてやらぁ！」

頭に血がのぼっている幽助に蔵馬が待ったをかける。強行突破するしか方法がないと喚く幽助に提案をしたのは意外にも飛影だった。

「奴らの上を見ろ、あの窓から行ける」
「おい、無茶言うんじゃねぇぞ。どうやってあの高さまで跳ぶんだ？」
「てめぇ！戯言扱きやがって！」
「幽助一人は無理だよ。出来たら人間じゃない」

三人の言い分を押切飛影は堂々と言い張る。

「俺に名案がある」

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