赤葦くんは餌付けたい【赤葦京治】

2. ページ3

「あ、いた。」



ミートボールをあげた次の日、赤葦くんは今日も中庭にやってきた。少し大きめの袋を持って。




「えと……これは、？」



渡されたのは、「BIGチーズ」と書いてあるたぶんスナック菓子の袋。



「昨日ミートボールくれたから、お礼。」



「え、いやいやいや！ミートボール1個でお返しだなんて、」




「俺がそうしたいだけだから、ね。食べて？」




優しく微笑まれた顔に少し圧を感じて、じゃあと袋を開けて一口頬ばった。





「っ、お、おいしいぃ……！！」




チーズ風味のカリカリとした食感がたまらない……！







「……ふっ、ふふっ、」





隣で聞こえる笑い声。笑い声の主はもちろん赤葦くんだ。



「へ、な、なんですか急に、」





「いや、美味しそうに食べるなぁって、ふはっ、」





「美味しそうに食べてて笑うってなんですか！？」




「んー……俺食べること好きだから、美味しそうに食べてる人の近くにいるの安心するんだよね。」









んぐっ、と喉に一瞬詰まらせた。急に変なことを言うからだ。

……少しだけ、気まずい空気が流れる。赤葦くんも自分が言ったことに少し恥じらいを感じているのだと思う。










「……ねぇ、これも食べない？」



切り出したのは赤葦くんからだった。

袋から出したのは、「ポップコーンミニ」という如何にも美味しそうなパッケージの袋。




袋を開けて、赤葦くんが一口食べた。






「っ、ぅま、……これはいいな、」




ボソボソと独り言なのか喋りかけられてるのか分からなくて、少しキョドってしまった。

そんな私を見て赤葦くんは、




「はい、食べなよ。」



袋をこちらに向けてきた。いや、さすがに悪いと遠慮しようとしたが、


…………だめだ、美味しそう………………、




袋に手を伸ばした、





「…え"っ、！！！」




ひょいっと避けられて袋は赤葦くんの方へ。赤葦くんはそのままもう一口頬ばった。




「ふっ、ははっ、なにその顔……！ふふっ、」




「ひ、ひどいっ、！！」





ごめんごめんと軽く流され、今度こそ袋を私の方へ向けてポップコーンを取らせてくれた。


口の中へ投げたポップコーンは、焦らされた分だけ美味しかった。








「……幸せそうな顔、」





赤葦くんはぼりと言ったが、私はなんて返したらいいのかもわからなかったので聞こえなかったふりをした。




それにしても、赤葦くんになんだか餌付けられてる気がする。

3.→←1.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す