第九十九話 ページ14
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「Aさんは弄ぶのが随分とお好きなんですね。」
「……あのですね、沖矢さん。私は別に弄んでるわけじゃないです…!」
「怒らないで下さいよ。綺麗な顔が台無しです。」
「またそんな事言って!」
頬を膨らまし向こう側を向いてつっけんどんな態度を取る。
すると、向こうから控えめに口にされた甘い言葉に更に向こう側を向いた。
沖矢さんも安室さんもそうやって女の子を煽てることは上手なんだから!
「こっち向いて下さい。」
「嫌です。」
「……貴方って人は本当に…可愛らしいですね。」
「え!?」
可愛いの四文字に反応して思い切り後ろを向けば悪戯が成功した、とでも言いたげに口角を上げる沖矢さん。
……だ、騙された!
「……ほんっと沖矢さん懲りないですね…!」
「おっと、すみません。口から本音が思わずポロリと。」
「嘘つき!!」
「生憎僕は嘘が嫌いです。」
ニコニコ貼り付けたような笑みを見ながら肩をわなわなと震わせ小さく睨む。
そんな事気にしていないとでも言うかのように沖矢さんの表情は終始変わらなかった。
私も一切を気にしないことにしてストローを口に含む。……しかし。
「……そろそろ選んで欲しい。」
ラズベリーの甘酸っぱい風味が口の中に残る頃、するんと喉を潤す液体と同化して沖矢さんの言葉も脳内に入ってくる。
思わず、レポート用紙がするりと手から抜け出した。
「……え、っと、沖矢さん。声が…?」
先の沖矢さんの声とも思えない程深く、そして渋い声が丁度いい音波で脳内を駆け巡る。
聞いたことのない声は明らかに目の前の沖矢さんから発せられたもので意味も分からず目をぱちぱち瞬きしてみせた。
目が合えば何故かぎらりと光る瞳孔に沖矢さんのようで沖矢さんじゃない人が目の前にいるようで慌てて視線を逸らし、散らばったレポート用紙を拾おうとする。
しかし、拾おうとした手を取られると不意にぐいっと引っ張られ余裕のない沖矢さんの顔が見えた。
「……あ、の。沖矢さん?」
「俺は沖矢じゃない。」
「えっと。」
「土曜の午後九時。俺の家で待ってる。」
「……え、あ!沖矢さん!」
それだけ言うと自分のものをさっさと片付けた沖矢さんは人並みに揉まれ、消えた。
私は、ただただ呆然とその姿を見ているしかなかった。
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花帆 - こんばんは、安室さんとの両想い…!!甘くてトキメキます(*´ω`*)これからの展開も楽しみに応援しております♪ (2018年7月17日 4時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
瑛奈(プロフ) - 初めまして!いつも楽しく読ませていただいます!ついに夢主ちゃん、安室さんが好きだって自覚しちゃいましたね(笑)今後の展開で降谷さんとしてはどう動くのか楽しみです(笑)更新大変かもしれませんが頑張ってください! (2018年7月1日 15時) (レス) id: 7374128719 (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 更新ありがとうございます!夢主さんどんどん大変になってきますね…実質は相手2人なのに(笑) 目が離せません! (2018年6月18日 9時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
mao(プロフ) - 更新ご苦労様です!主人公うらやましい!(笑)安室さんファイトって応援したくなりますね! (2018年6月17日 20時) (レス) id: 5697599ead (このIDを非表示/違反報告)
来夢*゚(プロフ) - salomeさん» もう、いろんな人たちがてんやわんやしてますね…!工程通り進めましたが中々書く方はハードです…笑 これからどうなるかどうぞお楽しみに! (2018年6月17日 19時) (レス) id: 522dbc585e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:来夢*゚ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/list/playlistra/
作成日時:2018年6月13日 20時