ゆらりとゆれる ページ8
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思うに、飲みすぎはやっぱりよくない。
「きもちわるい……」
「だぁから飲みすぎんなつったろ」
むねのあたりがもやもやする。
これはよくない。
ぜったいよくない。
「いいか？俺は水買ってくるから、絶対ここから動くなよ」
「わかってますよ」
「ホントかよ…」
駅のホームのベンチに座ったままひらひらと手を振れば二宮さんが眉間にしわを寄せたまま走って人ごみに消えていく。
この時間帯でもホームには人があふれかえっていてこれだけの人はいったいどこから出てくるのかなってぼんやり考える。
こんなに人がいたら二宮さんとすれ違ってもわからなそうだ。
けれど、私はその人ごみの中にその人の姿を見つけて息をのんだ。
向こうは私に気づいているのかいないのか、こっちの方を向いてるけど特に反応はない。
咄嗟に怪我をしてない左手に鞄をひっつかんで転がるようにして走り出した。
ヒールなんて履いてこなければよかった。
もつれる足でエスカレーターを駆け上って一目散にホームから逃げる。
鞄を持った左手じゃなくて、一昨日捻った右手首が熱をもって痛い。
柱に手をついて息を整える。
大丈夫。
後ろから声も聞こえてないし、足音…は雑踏の中じゃ多分聞こえないけどそれらしい感じはしてないし。
へいき、へいき…。
壁に付いた手首が痛い。
頭がくらくらして、からだの中がぐわんぐわん揺れてるみたいな感じがする。
あーあ、せっかくもう思いださなくていいようにあんなに飲んだのに。
ずるり、手から鞄が滑り落ちてパンプスの上に落ちる。
ゆらりとゆれる世界のなかでなんとかスマホを取り出して通話履歴を呼び出す。
「にの…さ……」
咄嗟に脳裏に浮かんだ甘やかしたがりのおかしな人は、ここにはいない。
「ちょっとお姉さん、大丈夫ですか…？」
薄らぐ視界の中で低くて落ち着いた声だけが耳に届いた。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2019年7月19日 17時
