甘く、沈む。《ars/k.n,s.s》 (ページ41)

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フレンチトーストページ41

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ひとつ、私があくびを吐き出したら二宮さんがまた私の頭を撫でる。

「昼ごはん、作るから。眠いならもうちょい寝てれば」

「んー……ううん、ここで見てる」

「別に面白くないよ」

「いーの」

「あっそ」

なんとなく、二宮さんを見ていたい気分だった。

キッチンに立つ二宮さんの猫背の背中をダイニングテーブルに上半身を寝そべらせながら見つめる。

なんだか今日は、機嫌がよさそうだ。

そうして話は冒頭に戻る。

出来上がったフレンチトーストから立ち込める甘い匂いが部屋に漂う芳香剤の花の匂いと混ざり合って肺の中まで甘ったるい香りを充満させる。

すっかり煙草の匂いが薄くなった部屋にずいぶんフレンチトーストが似合っている。

甘ったるいココアが添えられて私の前に置かれたふわふわのフレンチトーストを見ながら、やけに二宮さんは甘いもの作りがうまいんだよなぁとぼんやり思う。

「ほら、腹減ってんだろ。食いな」

「……いただきます」

手を合わせてフォークとナイフを握ると「あ」とつぶやいた二宮さんの手がするりと伸びてきて私の手からカトラリーを取り上げた。

「あ」

今度は私がその一文字を無意識につぶやくと二宮さんがこっちも見ずに手元のフレンチトーストを切り分ける。

「俺がやってやるよ」

基本的にこの人は甘やかしたがりだ。

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