甘く、沈む。《ars/k.n,s.s》 (ページ27)

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内緒ページ27

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そういえば、鞄の中には櫻井さんからもらったカプセルが入っている。

なにもされてない、というのはウソとまではいわないけどホントのことではなかったかもしれない。

二宮さんの様子が気になってつい口から滑り出したけど、もしかして言ってしまったほうが二宮さんを元気にできただろうか。

でも、櫻井さんが「彼には内緒だよ」と言っていたし、なんとなく誰かに言うのためらわれるし。

「急に変なこと言って悪かった。気にすんな」

先に洗い場でバスタオルを手にした二宮さんがぬれた前髪の向こうで目を細める。

……しばらくは鞄の中に入れっぱなしにしておくほうがいいかもしれない。

もし見つかったらその時はその時だし、見つからなかったらそれはそれ。

「おまえはゆっくりつかっててもいいよ」

バスタオルでわしゃわしゃと髪を拭いた二宮さんが振り返ってそう言った。

「んーん、ココア飲みたいし、出る」

「そっか。おまえ好きだなぁココア」

「うん、好き」

二宮さんと過ごすようになってから好きになった甘ったるいココア。

そのおかげで櫻井さんに一緒だねなんて笑ってもらえたんだから、人生何があるかわからない。

「そう。じゃ、早く上がってこい」

先に出ていく二宮さんの背中を見ながら、櫻井さんにあげるのはもったいないなと思った二宮さんの甘ったるいココアに、カプセルの秘密は溶かして飲んでしまおうと決めた。

部屋の外ではまだ世界中の音を吸い込んでしまうような雨が降り続いていた。

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