制限時間は命ひとつ分 (ページ50)

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４９話ページ50

…イケメンという言葉の意味はよくわからない。
勉強不足だな…。
でも、サクの笑顔を見られて幸せだ。
自然と尻尾が揺れてしまう。…もっともっと褒めて欲しい。
あ…甘えちゃダメだ、もうこんなに大きくなってしまったんだから…。

「ひゃっほーい！リオちゃん、いや、もう“リオちゃん”だなんて呼べない…“リオさん”だ！」

もうそこは普通にリオンでいいのでは…。
そう思ってると、突然サクが物凄い勢いのまま抱きついてきた。

「進化おめでとー！って、いだあああ！！」

オレは反射的にそれを受け止めたんだけど…胸にある棘みたいなものがサクの額に直撃して、悲惨なめにあわせてしまったことは、いうまでもなかった……。

────

『皆さん…本当にありがとうございました！この恩は、一生忘れません！』

回復したサーナイトさんが、ラルトスと手を繋いだまま、お礼を言った。
ラルトスも『リオンおにいちゃんかっこいい！』とぴょんぴょん飛び跳ねている。
そんなに言われると照れちゃうな。

『ほんと良かったよ…一件落着ね！』
『さて…これからどうやって、みんなと合流するかって問題はあるけどな…』
『あっ』

少し離れたところを見ると、サクが額にたんこぶを作りながら、地図と睨めっこして、ブツブツと何かを呟いている。
その表情は、訳がわからないといった絶望に支配されている…。
状況を何となく察したのか、サーナイトさんがオレたちに話しかけてきた。

『あの…宜しければ、目的地までご案内致しましょうか？ここの山林なら、道を知っていますので…』
『！？いいんですか！？』
『はい！少しでもお礼がしたいので。あのニンゲンさんの地図？を使って、どこへ行きたいか示してくだされば、ご案内できるかと』

オレとファリナは顔を見合わせて、頷いた。このままじゃ、もっと道に迷う気しかしない。サーナイトさんの言葉に甘えることにした。

『サク、サーナイトさんが案内してくれるそうだよ…って、あ…そうか、紙とペンは…』
「紙とペンならそこだよ！」

ん？
オレは何か、会話に違和感を覚えた。
サクがまるでオレの言葉を理解しているような…。

『え？』
「ん？」
『いやあのさ……』
「どうしたの？リオちゃん」
『…サク…さっきから、オレの言葉、わかるの？』

え、とサクがじーっとオレの顔を見ていたけど…次の瞬間、目を見開く。

「ああああ！？よくよく考えたら、リオちゃんが、喋ってるううう！」

サクの叫び声が、森の中でこだました。