制限時間は命ひとつ分 (ページ41)

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４０話ページ41

サクは「ちょっと傘持っててねー」とボクに傘を渡すと、おもむろにリュック以外に持ってきたカバンを漁り始めた。「こうなると思って、持ってきてたんだよねー♪」と取り出したのは、救急箱と、水筒の予備に持っていたと思われる天然水と書かれたペットボトル。
修学旅行に救急箱持ってくるヒトって、なかなかいないかもしれないけど…。

「えーっと、こういう時は、とりあえず傷口を洗って…冷たくてごめんねー…それから、無闇に消毒液は使わず…」

サクは、適切に素早い応急処置をしてくれていて、ボクはびっくりした。

“凄いね、サク”
「えっへん！凄いでしょ！リオちゃんが頑張って体を鍛えてる間、私も色々勉強してたんだ」

そうだったんだ…。ボクは最近は自分のことに集中しすぎて、サクが何しているのかとかわかってなかった。

「私の夢は、ポケモンのお医者さんになること！」

雨音に掻き消されないような、力強い言葉で、サクはそう宣言した。

「ずっと前のあの日…リオちゃんが大怪我して帰ってきた時思ったんだ。私がポケモンのお医者さんだったら、こんな怪我でも、ちょちょいのちょい！って治して、リオちゃんが苦しむこともなかったのに…って…やっぱり、何もできない自分が情けなくて」

サク……。
サクも、あの日からサクの中で、何かが変わっていたんだ…。

「それに、世界にはリオちゃんみたいに怪我をしてるポケモンも沢山いるのかも…病気をしてるポケモンも沢山いるのかも。ポケモンリーグとかのポケモンだって、テレビでは華やかに伝えてるけど…怪我しても寝かしたりして、自然治癒にさせたりするだけでしょ？そんなものですぐ治るわけがない…そう思うと、居ても立っても居られなくてさ！」

サクはそう言いながらも、処置をする手を休めない。

「だから私は、ポケモン専門の病院を作る！どんな怪我でも病気でも、すぐに治せるような…ポケモンも人間も、安心して駆け込めるような…そんな病院を作りたい」

「私、今まで明確な夢なんて持たなかったんだけどね！」とサクは明るく付け足した。
なんて、サクらしい壮大な夢というか…素晴らしい夢なんだろうって思った。
そんな病院があったなら、きっとポケモンの命も、また、それを支えにして生きているヒトの命も、沢山救われるだろう。

「はいおしまいっ！どう？包帯きつくないかな？」

いつのまにか処置は終わったのか、擦り切れていた右足に、可愛いらしいハートがついた桃色の包帯が巻かれている。