制限時間は命ひとつ分 (ページ38)

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３７話ページ38

そっか、お母さんはサクがちゃんと学校の規則を守って、ボクをボールに入れていくと思ってるんだ…。
お母さんは少し怪しんでいたけど、結局送り出してくれた。

「いってらっしゃい！」
「いってきまーす！」

二人の会話が、リュックの外から聞こえる。
サクは最終確認をするフリをして、部屋でボクをリュックに入れて家を出て行った。
リュックの中は、サクの動きに合わせて、ゴソゴソと揺れる。ボクはなるべく揺れに逆らわないようにしつつ、リュックのチャックの隙間から外の様子を少し見ていた。
だんだんと、沢山のヒトの声が聞こえてくる。
多分、学校に着いたんだ！
隙間からは見慣れない大きな建物と、サクくらいの年齢のヒトが沢山行き交っていた。

「おっはよー！サクラ！沢山荷物抱えて、気合い入ってんね！」

多分サクの、ダイキさんたち以外の他の友達であろう聞き慣れない声が聞こえたと思ったら、思いっきりリュックを叩かれた。

「ｷｬﾜﾝ！」

突然のことに、思わずそう叫んでしまった。
ボクは慌てて自分の口を抑える。

「きゃわん……？」
「び、びっくりするなあもう！リュック叩かないでよ！変な声出ちゃったじゃん！」
「…あれ、なんかポケモンかと思ったけど、サクラの声だったか」

そんな会話が外から聞こえて、ボクはほっとため息をついた。これからどんなことがあっても、驚かないようにしないと…。
その後、外の様子はあまり見られないからわからないけど、とりあえず点呼を取って、バスに乗り込むところまでは来たみたいだ。

「いやおま…マジでその計画実行すんのかよ…」

聞いたことのある声がして、ボクは耳を動かす。
ダイキさんだ…。

「とにかく、バレたら大変だ、誘導するから、バスの一番後ろ行こう」

コソコソと、ユングさんの声も聞こえる…。
何だかんだで、二人は協力してくれるみたい。

「ありがと！いくよ、リオン♪」
「わうっ♪」

大好きなサクの声に、ボクは思わずいつものように返事をしてしまって、再び自分の口を抑えた。

「わう…？」

チャックの隙間から、他のヒトたちが、リュックの方を見ているのがわかった。
これはまずい…。

「わ、わうー！修学旅行で、俺の気分はわうわう！わーっ！」

ダイキさんがそう叫びながら、突然みんなの前で踊り出した…。「なんだ、ダイキか」「変な奴だよな…」「あいつのあだ名、今度から“わうわうマン”な！」と、みんなが口々に話し始める。

…ダイキさん、ありがとう…ごめんなさい…。