制限時間は命ひとつ分 (ページ32)

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３１話ページ32

お父さんは変な声で笑いながら、少し引いているボクの肩に手を置いて、言った。

「ねえねえリオン………大好物のココア、チョコレート…たくさん飲みたいよね？食べたいよね？」

凄く怪しいけど、ボクは何度も頷いた。

「ココア沢山飲ませてあげるから、ルカリオに進化したら、よーく観察させてね…俺はまだ、ルカリオの生態は、わからない部分が多いんだ…あの姿、かっこよくて、ワクワクするじゃないか…いいよね…？ね？」

お父さんはにやにやしながらそう詰め寄ってくる。
うん…やっぱり暫く子どものままでいい…進化しないでいいや…。
でも、ココアは飲みたいな…うーん…ちょっと迷う…。

その後気を取り直して、ボクはお父さんに文字の書き方を教わったり、趣向を変えて発声の練習もしたはしたんだけど…。
リオルという個体の声帯に限界があって、どんなにチャレンジしても、人間の言葉を発声することはできないみたいで、ボクは肩を落とした。

「ま、まあそんな残念がらなくてもいいんだって！…ルカリオの個体には、テレパシーで会話する個体もいるみたいだし！」
“テレパシーで？”
「うん。その房が、さらに発達して、そういうこともできるようになるらしい。まあできない子のが多いんだけど、多分、既にリオルの時点で、人の言葉を理解しているリオンならできるようになるんじゃないかな…」

「だから、早く進化しようね…♪」とやっぱりお父さんが肩に手を置いてくる。
…和やかな雰囲気の中、襲撃の言葉の意味と、ボクの本当の両親のこと…どうしても、どうしても聞くことはできなかった。

────

そんな日々が続いて、また暫く経った頃。
またサクラの友達が遊びにきた。
勿論、いつものようにゼニガメたちもいて、『よお！』と声をかけてくる。

『おいおい、リオンたち、ご主人から聞いたか！？』
『え？何を？』

ゼニガメとモクローの目がキラキラと輝いている。
心当たりがなくて、ボクとファリナは顔を見合わせた。

『ご主人たち、修学旅行に行くんだって。なんとなんと、そこにはポケモンも一人二匹まで連れてっていいんだって』

今度はモクローがそう説明してくれた。
修学旅行…ヒトが学校の友人と、遠くに遠征しに行く行事…というイメージしかない。
てっきり、サクが暫く帰って来なくて、寂しくなるのかなと思っていたけど、一緒に行けるなら話は別だ。

『ほ、ほんとに！？ワタシたちも行けるの！？』

ファリナも早速目をキラキラさせている。