制限時間は命ひとつ分 (ページ30)

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２９話ページ30

襲撃とは…不意をつき、攻めることの意…。
つまり、ファリナやボクの本当のお父さんとお母さんは…ボクらを捨てたんじゃなくて…誰かに、襲われていた…？
その時、何者かの気配を感じて、ボクはハッとした。ギシギシと廊下を歩いてくる音が聞こえる。
これ…お父さんの足音と、波動だ…！
ボクは慌てて本を元の場所に戻すと、本棚の隅っこの、山積みになっている本の中に隠れた。
本たちの隙間から、部屋の中の様子をじっと観察する。お父さんはギギ…と部屋のドアを開けて、中に入ってくると、ゆっくりと閉めた。

「えーっと…あれれー…？進化にまつわる本、どこいったっけなー…」
『……』
「ん？リオン？そこにいるんだろう？さ、出てきなさい」

気配を消していたつもりだったんだけど、ついにバレてしまった。
ボクはゆっくりと本の間を通って、お父さんのところへ向かう。お父さんは「怒ってないよ！」とニコニコして言った。

「いやー…サクラから聞いたけど、リオン…文字が書けるようになったらしいじゃないか！お父さん今まで気づかなかったけど、ここでずっと一人でお勉強してたのかい！？」

お父さんの問いかけに、ボクは頷いた。
そっか、サクがお父さんに言って、バレたのか…でも、そうだよね…ポケモンがヒトの文字書き始めたってなったら、びっくりするもんね…。

「そうならそうと、ハッキリ言ってくれたら、沢山教えたのに…！独学するポケモンなんて、聞いたことないよ、あっはっはっは！おいで、どこまで書けるようになったか、見てあげよう。ホットココアも用意してあげるね、準備しててね」

「お母さんたちには内緒だぞ」とお父さんはウインクして、部屋の外へ一旦出て行った。
やっぱり、細かいところがイグニスさんに似てる。
ヒトとポケモンは、一緒に暮らしていると性格が似てくるという話を聞いたことがあるけど、本当なのかもしれない。
ホットココアと聞いて、ボクの目はキラキラと輝いていたと思う。まだ子どもだから、と一口しか飲ませてもらってなかったけど、凄く美味しいんだ。

ボクがペンと紙の準備をしていると、マグカップを二つ持ったお父さんがニコニコしながらやってきた。

「はい、どうぞ！」

そう言って、コトンと机の上にマグカップが置かれる。あれ？でも、どっちのマグカップも、ココアが並々に注がれていて…こんなに飲んでいいの…？
ボクがそう目で訴えると、お父さんは頷いた。