制限時間は命ひとつ分 (ページ29)

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２８話ページ29

『私ね…リオちゃんがいなくなるのだけは、嫌なの。正直…リオちゃんは苦しんでいるのに…何もできない自分が、凄く怖かった。』

ごめん…ごめんね、サク。
ボクはサクに抱きついた。サクは、ボクを抱きしめながら、泣いていた。
また何かあったときのためにも、強くならなくちゃ……そう思った。
自分自身を守れるように…イグニスさんのように、みんなのことも、サクのことも、しっかり守れるように…。

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それから、ボクはちょくちょく顔を出すようになったイグニスさんに頼み込んで、戦い方を教わるようになった。
攻撃の方法はもちろん、受け身の取り方とか、一から全部教わった。たまーに、ゼニガメたちが遊びに来ると、そこはもう、ヒトの学校の授業みたいに、イグニスペシャル講義が始まる。
授業名のセンスはよくわからないけれど…たまに森とか山とか連れてってくれて、凄く楽しいんだよね。

『はいはいこの前の復習するぞ！さて、イグニスーパークイズ第一問！襲い掛かろうとしているポケモンは、どんな動きするんだっけ？』
『はい。周りのポケモンの動きに合わせようとします』
『おおお！モクロー大正解！イグニスポイント5点！そうそう、奇襲をかけるってバレたくないから、無意識に怪しまれないような動きをするんだ』
『おいらもイグニスポイントほしいいい！』
『…でも、イグニスポイントって、毎回貯めても特に何もないよね…？』
『ファリナ、気づいちゃダメ』

この時から、ボクは細かいことは全部メモを取るようになっていた。
文字を書く練習にもなるし、一石二鳥だよね。
あとは、お父さんからも、何かとアドバイスを貰ったりして…。イグニスさんがいない時は、自主練もたくさんした。
本当に、お父さんもイグニスさんも、何者なんだろう。本当に、たまごやさんなのかな…。

「だいぶいい動きになってきたな！」
『だいぶいいぞ、リオン！』

しんくうはの練習中、お父さんとイグニスさんに、同時に同じようなことを言われたりすると、ボクは思わず笑顔になる。
本当に、二人は仲良しなんだなって…。

そんな充実した日々が続いたある日のこと。
ボクがいつものように、真夜中にお父さんの書斎に忍び込んで、ヒトの本で文字の勉強をしていると、気になる単語を見つけた。

『しゅ、う、げ、き……“襲撃”…これって…』

ようやく、ボクはあの日、お父さんたちが“ポケモンの卵が襲撃される事件”の、襲撃というヒトの単語の意味を知った。