転校生 Sou ページ9
高校2年の夏。
転校生がやって来た。
身長が高くなくて、優しい声に、優しい顔の青年。
クラスの女子はその魅力的な顔と声に目を輝かせていた。
でも私は新しいクラスメートをそういう目で見ていなかった。
"自分をいじめる奴がまた1人増えた"
そう思った。
クラスの全員からいじめを受けている私は、人を信じられなくなっていた。
あの優しそうな青年もそう。
私をいじめている時は悪者の顔に変わるんだ。
そう思っていた。
でも、彼は一切私をいじめなかった。
それどころかいじめはどんどんと無くなって、最後には誰もいじめなくなった。
時間が経つと、私にも友達と言えるような存在が出来た。
毎日が楽しくて、本当はいじめられていなかったんじゃないかなんて思って。
あの転校生が来てから変わったのもなにかの間違いだと思った。
こんな生活がずっと続けばいいと思った。
「今日で転校する奴がいる」
担任がそういって手招きをする。
前に出たのは...
あの転校生。
暑い夏に転校してきた彼は、寒い冬の日に転校する。
彼とは話したこともなかったし、思い出もない。
それほど気にもしてなかった。
放課後、友達に呼び出された。
「Aちゃんに言わなきゃいけないことがあるの」
「Souくんに言われたからなんだ」
「黙っててごめん」
「言うなって言われてたんだけど...」
「いじめを無くしたのもSouくんだし」
「私達に友達になってやってくれって言ってくれたのもSouくんだし」
「Souくんの頼みだったから皆聞いたんだよ」
私は気付いたときには教室を飛び出していた。
教室からは友達の叫ぶ声が聞こえた。
違う。
騙されていたのが悲しくて飛び出したんじゃない。
今日で転校してしまう彼を見つけたくて。
今日で会えなくなってしまう彼にお礼が言いたくて。
必死に走った。
Sou「やっと話しかけてくれたね。Aちゃん」
乱れる息を整えながら、声が聞こえた彼の顔がある方を見た。
その時の彼の笑顔は、今までに見たことがないような。
Sou「その様子じゃあの子達が話したのかな?」
Sou「?どうしたの??」
そんな笑顔の彼に恋をしてしまった。
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