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悔しくて、苦しくて、泣きたくて、怒り散らしたくて、暴れたかった。
そんで願わくば、そんな俺を暖かく抱き締めてくれ、と密かにAを見つめ続けた。
そんな高校時代。
でも、俺は俺に対しての気持ちと侑に対してのAの気持ちが違うことに気付いていたから、我慢した。
飲み込んで、押し殺して、暴れないように宥め透かして、朝起きると涙で枕がグッショリ濡れて、瞼がパンパンに腫れとったな。

俺は、喉から手が出るほど欲しいそれが俺から離れることのないように願って、側に居ることを選んだ。悔しくても苦しくても泣きたくても、怒鳴り散らさないように、暴れないように。
そうしなければ、Aは俺の手の届かないずっと遠くに行って、2度と触れられない気がしたのだ。

俺は、その心を揺り動かすことが出来ない。その瞳を奪うことも。Aの口から発せられる己の名は確かに親愛に溢れてはいるが、俺が欲するものを一身に受けているのは、1番近くにいる俺の片割れ。
向けられるAの熱い視線。吐息交じりの己の名。その微笑み。
頭の芯が熱く爛れる様だ。

(…重症やな)

思わず自傷気味に笑う。何故ならそれはいつでも、正しく想像の中の出来事だったからだ。
こんな、何の光も見えない状況に嫌気が差さないわけが無かったが、諦めたくなかった。それでもAの側に居るのを止められなかったのだ。

(俺が気持ちを伝えていたら……)

考えなかったことは無い。
しかし、そんなことは出来なかった。
臆病?そうやな、そうや。想像した結果はきっとその通りやったやろし、俺が足掻いたところで現実は少しも変わらんかったやろな。

(これでええんや)

侑が顔を真っ赤にして

「サム!!俺、Aと付き合うことになったで!!」

満面の笑みで俺に抱きついて言ったのは、高校1年の秋だった。

「………」

俺は、なんて侑に返したか覚えとらん。
でもその夜、俺は泣き続けて、次の日Aに心配されたんやっけな。

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作者名:ポロリ | 作成日時:2019年10月30日 11時

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