【怠惰な王子と元教育係】瞳の邂逅 ２【無償の………】

59＊いい度胸だな ページ15

ル「！いけない！ラピスちゃんのところにあの黒いのが！」

どういうわけか、黒い穴がラピスの近くにまで現れ、そこから出てきた黒い物体はラピスへとその魔の手を伸ばしている
絶対に阻止しなければ！とベル達が向かおうとするのだが、黒い物体がその行く手を阻み、近づくことができない

ラ「やっ……………にぃに………！」

ぎゅっと目を瞑り、目の前の恐怖を拒絶する
それでも黒い手はラピスへと伸びてくる
間に合わない！と思われたその時だった


「歪風情が、私の前で空間と荒らすとはいい度胸ではないか」


「きたねぇ手でラピスに触ろうとしてんじゃねぇ！！！」


ギヤァアァァァァァァ！！！


苦しげな叫び声が耳に届き、同時に包まれるような温かさを体に感じる
その前に聞こえてきた聞きなれた安心できる声と、もうすぐ離れていってしまう恋しい声
ラピスはゆっくりと瞼を開き、それらの声の正体を見つけた

ラ「にぃに……………A……………」

X「ケガはねぇか」

ラ「うん………」

ア「やれやれ、また派手に歪みが大きくなったものだな、こうなったら再生系魔術を使った方が手っ取り早そうだ」

ラピスを抱きかかえ、鋭い眼光で黒い物体をにらみつけるザンザス
そして、その横でいつもの生気のない目で部屋全体を見渡すA

並ぶ黒髪と、威圧的に放たれるプレッシャー
それは実に迫力満点かつ、強い存在感を発揮するツーショットだった

マ「ボス！」

ス「う゛お゛ぉぉぉい！！ラピスは無事かぁ！！」

フ「案ずるな、ラピスに触れる前に歪は消滅させた、近くにあった歪みも塞いだのでそこからあれが出てくることはもうない」

べ「歪？つか、歪みってもうほとんど治ってたんじゃ………」

もともと小さな歪みで直すのも時間がかからないと言ったのはAだ
歪みもこうやって目に見えたこともなく、今日だって最後の調整を行っていたはず
これは一体どういうことなのだろう

フ「誰かが空間系魔術を不発でもさせたのだろう、そのせいで直りかけてきた歪みが大きくなり、今のように目に見えるまでとなった
そこから出てきているモノは“歪”といってな、空間の歪みから生まれる異物のようなものだ、霧飛ばし、真っ二つにしたぐらいではあっという間に再生するが………」

ゆらりと瞳が怪しく輝いた瞬間、その視界に入っていた数体の黒い物体が一瞬にして消え去る
また再生するのではと思われたが、塵も残さず消された物体は再生する兆しをまるで見せてこない

―――

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