【怠惰な王子と元教育係】瞳の邂逅 ２【無償の………】

75＊それぞれへの対価 ページ31

フ「一番世話になったのは食事面だったのでな、すこし考えてこんなものにさせてもらった」

マ「ムムッ、ワインもシャンパンもテキーラも酒にいたってはすべて最高級品じゃないか、よくこれだけ集められたね」

フ「酒については常々集めているからな、選び、用意すること自体は造作もない」

さすが愛酒家のAといったところだろうか
しかも、ただ最高級品を選ぶだけでなく、ザンザスはもちろんのこと、お酒を飲める幹部達の口に合いそうな銘柄を厳選している

食器はいろいろと食事の際に騒がしくなるヴァリアー事情を思って選んだのだろう
丈夫そうかつ、実に趣味のいい品々が選ばれている

フ「それとベル、貴様にはこれをやろう」

そういうと、ベルの方に何かが投げ渡される
すこし驚きながらも軽くそれを片手でつかみ取ると、すこしひんやりとした硬い材質を手のひらに感じる
一体何を渡されたのかと見てみると、それは手のひらいっぱいに広がる四角く黒い蓋の付いた缶だった

夜を思わせる絵が美しく描かれており、ただ見た目だけでは一体何が入っているのかということまではわからなかった

フ「それには貴様が気に入ったと言っていた茶葉が入っている、うまい入れ方もその中にいれてある紙に書いているから丁寧に入れるのだぞ」

べ「ししっ、んだよ、モノやるのまでてめーは偉そうだな」

こんな時でも、Aは変わらないのだな、と思いつつ、ベルはもらった茶葉の缶を軽く握りしめ、小さく笑う
対価という形ではあるものの、まさかAからプレゼントをもらえたことに、ベルの心の中に何とも言えぬ嬉しさが広がり、同時に、これで本当にお別れなのだという実感も湧き上がってきてしまう

フ「それと、ヴァリアーに対するもう1つの対価だ」

そういうと、今度はザンザスへと手裏剣のように何かを投げ渡す
ザンザスはそれを軽く指で挟んで受け取ると、渡されたものを見つめる
それは黒い金属のカードで、金色で13ケタの数字が刻まれていた

フ「私の連絡先の1つだ、ここからの連絡でなら、大体5回までなら対価なしで依頼を受けてやろう」

X「あ゛？てめーはもう帰るんだろ、なら依頼もなにもできねーだろうが」

フ「何を言うか、確かに今回はこれで帰るが、私はいつだってこの世界に来ることができるのだぞ？」

―――

76＊稀代の天才→←74＊別れの序章

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す