【怠惰な王子と元教育係】瞳の邂逅【無償の………】

1＊始まりの違和感 ページ4

ゴシック調の豪華な一室
40平米近くあるその部屋に置かれているのは、人がゆったりと横たわることができるほど大きなソファーと黒いテーブルだけ
部屋中には煙と甘い匂いが蔓延し、思わず鼻をふさぎたくなるところだ

そんな室内にいる1人の人物
ソファーに腰を掛け、足を組みながらキセルを吹かす姿は妖艶かつ優雅で1枚の絵画のように美しかった
長く、漆黒のように深い黒髪、生気を感じられない紫色の瞳は無機質感ではなく、その人物の美しさをより引き出していた
その人物の名前はA・ファウスト
インフィジティー・ワールドという特殊な世界に在る魔術師という特異な存在だ

フ「…………さて、そろそろ行こうか」

テーブルに置いていた煙管盆のなかにある灰吹きにちょうど燃え尽きた灰を捨て、瞳を怪しく揺らめかせれば煙管盆は消え、手の中にあったキセルはソファーの背もたれにかけていたコートにしまう

これから彼女が向かおうとするのは、自らがいる世界とは異なる世界
その世界には契約によって主従、というより同盟関係を結んだ人物、ザンザスがいる
ここしばらく魔術の研究のため、10日間ほど顔を出せていなかったため、久しぶりの来訪となる

ちなみに、今回彼女が研究していたのは新たな空間系魔術の創造
研究中にすこし空間に小さな歪みを作ったが、なんとか成功には至った
歪みはまぁ、小さいし後で直せばいいかと、放置中でザンザスに会ってからやろうと思案している

フ「いつまでやっていたのだと、またベルの奴に文句を言われそうだな」

クスリと笑い、まぁ、私の勝手だが、と小さく漏らすと再び瞳が怪しく光り、目の前にAが余裕で通ることのできる大きさの黒い穴が現れる
これは、こことは違う世界へと移動するための空間系魔術の一種だ
そして、世界同士をつないでいるのかすぐには通らず、じっと穴の奥と眺めていると、ふと、小さな違和感を感じ取った

フ(なんだ……？いつもと何かが違う)

そう感じ取ると、いつもなら玄関近くに飛ぶところを今日は場所を変え、ザンザスが頂点に立つヴァリアーのアジトであるヴァリアー城内部へと座標を定める

すこしすれば、穴の向こうで長く続く廊下が見えはじめ、空間はつながったのだと確認する
そして、違和感の正体を探るべく、やや嬉々とした表情で慣れたようにその中へと足を進めていったのだった

―――

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ラッキー食べ物

すし

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