【怠惰な王子と元教育係】瞳の邂逅【無償の………】

20＊イライラ ページ23

《ベルフェゴールside》



ベ「なー、マーモン。」



オレはテーブルの上に突っ伏しながら、向かいの椅子にちょこんと座って通帳残高を確認しているフードの赤ん坊に声をかける。

通帳を見る顔は少し機嫌が良さそうで、口許が弧を描いていた。



マ「何だい、ベル。夕食はそろそろだってルッスが言ってたよ。」

ベ「違ぇーし。」



王子に対して失礼過ぎね？

オレ、飯以外考えてねーみたいな感じじゃん。



ベ「あの魔術師とかいう変な女のコトだし。」

マ「A…………だったかい？」

ベ「そーそー。そんな奴。」



明らかに不審者って形してる女。

何時侵入したのか、正直言って、全然分かんなかった。



ベ「だって、魔術師だぜ？科学が発展したこの世界であり得なくね？」

マ「でも、実際に目の前で魔術を見せつけられたじゃないか。言っておくけど、あれは幻覚じゃないよ。僕の実力を疑うなら信じなくてもいいけど？」

ベ「マーモンを超える術師なんて、探す方が難しいっての。」



アルコバレーノの名は飾りではない。

マーモンは超一級の術師だ。

そのマーモンが幻覚じゃないってなら、あのいきなり出てきたクマやらネコやらウサギは本物なんだろう。



ベ「つーか、あの態度何？偉そーじゃね？王子に対して、ましてやボスに対してもアレかよ。」

マ「あれが彼女の普通なんじゃない？」

ベ「………………マーモン、あの女のこと信用してんの？」



マーモンはいつもと変わらず冷静だ。

オレばっかイライラしてるみてーじゃん。



マ「そんなわけないだろう？会って一日そこらの人間を信用する方が馬鹿げてる。金をくれるなら考えなくもないけどね。」

ベ「じゃあ何でそんなに落ち着いてんだよ。イライラしねーの？あんな女に居座られてさ。」



勝手にテリトリーに入られて、嬉しがる奴がいるわけない。



マ「ボスが魔術師だって認めたんだ。僕らがどうこう言ったところで、変わるわけじゃないだろう？」

ベ「そーだけどさぁ…………」

マ「それに、ラピスは悪人には懐かないよ。」



オレがイライラしてる一番の理由は、多分それだ。

姫を盗られたと思ってるオレが何処かにいる。

姫は人をよく見てる。

その人の本質を見て、良いか悪いかを判断してる。

姫が懐くってことは、Aは良い奴ってことになる。

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