続 ページ14
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人が来ないように見張っててあげるから、と説得して、彼女をシャワールームに連れて行った。もちろん使うのは初めてだろうし、清掃員さんでもないからいくらスタッフさんと言えど入ったことはないだろう。
「物の場所分かった?ちゃんと温まってきてね?」
『はぁい、』
意外にも彼女はあっさりとシャワーを浴びに行った。合理的な彼女のことだから、押し問答するよりダッシュで終わらせたほうが早いとでも思ったのだろう。
脱衣所でシャワールームに背を向けて、余計なことを考えないようにと適当にストレッチをして過ごした。
5分ほど経ってから、背後でガチャリと音がした。どうやら終わったようだ。
『さちさん、まだ見ちゃだめですよ、』
「大丈夫。見ないよ。」
『まだですからね、今服着たところです。』
「はいはい。」
『さちさんの服いいにおいします、甘いにおい。』
「なんだろう、香水かな。」
『……ん、もう大丈夫です、着替えました。』
「はいよ。」
振り返ると、ありがとうございます、と微笑みながら自分の服を身に纏う彼女がいた。
「…ごめん、おっきかったね。」
『……そう、ですね。まあちゃんと隠れてるのは隠れてるので、大丈夫です。』
袖も裾もひらひらと泳がせて、首元はオフショルダーになりそうなくらい緩い。ズボンは当然だけどずり落ちるのでウエストゴムを手で持っていた。
「ははっ、ズボンいらないかもね?」
『ワンピースにできますもんね。』
目のやり場に困るくらい無防備な彼女は、自分の適当な冗談にも真面目なトーンで返してくる。どう反応しようか迷っていると、彼女の髪からぽたりと雫が落ちた。
「おいで、髪の毛乾かしてあげる。」
『やったあ、さちさんすきです、』
「うん、俺もAちゃんのこと好きだよ。」
ほんとですかぁ、と間延びした声で言う彼女は、体も温まって少し眠くなってきたのだろう。座らせてドライヤーをあててやると、すぐにうとうとしはじめた。
温風で髪の毛がふわりと浮くたびに、彼女の白い首筋が見え隠れして変な気を起こしそうになる。
「Aちゃん、」
ゴーッというドライヤーの音に負けないように、少し耳元に寄って話しかけた。
「寝ないでね?」
『んぅ…それはむずかしい、かも、』
「この後仕事でしょ?」
『……ん…起こして…、』
「1回寝るのね?」
かくんとうなだれた彼女をそっと撫でながら、自分もとことんこの子には甘いなと笑った。
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かがみみお(プロフ) - うみさん» こちらこそ素敵なリクエストとご感想ありがとうございます!更新がんばります🤗 (12月12日 23時) (レス) id: 937947437c (このIDを非表示/違反報告)
うみ - 早速リクエストに答えていただきありがとうございました!癒されました!また更新されるの楽しみに待ってます(^^) (12月12日 22時) (レス) id: b1b3506f25 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かがみみお | 作成日時:2023年12月12日 11時