【歌.い.手】男装歌い手はじめました【そらる】 (ページ30)

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#30 渉ページ30

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「…ごめん」

そう言って、座り込むあたしに視線を合わせるようにしゃがみ込むうらたん

センターわけされてた前髪は、耳からはらはら解け、表情を伺うことができない。

『あの…うらたん…？どしたの…？』

声をかけるも聞いてないみたい

「ちょっとうらたさん？！Aちゃんに何してるんですか！！」

「抜け駆けはダメやでうらさん！！」

ドンドンとドアを叩くまふとさかたん
その2人の声にも耳を傾けない。

嘘でしょ

うらたんはゆっくりと近づき、抱き寄せられる

『っちょ、ほんとうらたんどうしたの？！』

背中に手を回され、逃げるにも逃げられない

「…Aちゃん」

だんだんと近づくうらたんの顔を見ようにも、怖さで目を瞑る。

「Aちゃん」

ついさっきまで顔の前で聞こえたその声は、いつの間にか左耳から聞こえて。
くわって…むわって…何かが湧き上がると同時に、心臓が破裂しそうになる

『…うらたん』
「渉」

『…え？』

恐る恐る目を開けると、少し寂しそうな顔をするうらたん

「…渉って呼んでよ」

絞り出すようなその声に、不覚にもときめいた。

『…渉』
「…あんがと」

あたしが目を開けたことに気づいたうらたん…渉は
目を瞑って、と言った

『…ッ』

「初めてだから、もし痛かったりしたらごめん」

いっ痛かったら…？！

『ちょ、渉何す…のッ』

目をあけようとするも、手で覆われている
微かに渉の香りがする

すると、首筋に渉の顎が乗せられた感覚が伝わって
ドクドクと心臓が高鳴る。

その瞬間、背中に回されていた手が動く。

うわ、なんか変な感覚

ジーって音する
チャックが上に上がる音。

…え？

「っし、これで大丈夫か」

背中のチャックをしめ上げてくれた…だけ？

『…え、渉さん…？』

「チャックしめただけだよ。

…もしかして少し期待した？」

悪戯っぽく笑う渉。
ドキドキから解放されたあたしは目眩に襲われ、目を瞑った

目を瞑る間際に見えたのは、ドアを蹴り開けるそらる。

なんだったんだ…

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