【歌.い.手】男装歌い手はじめました【そらる】 (ページ11)

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#11 優しい熱ページ11

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そんなこんなで、2人で黄昏ながらお弁当を食べて数分後。

肩を並べて座っていたはずの彼方さんは、いつの間にか目の前に来て

腕を広げた。

「…俺は、そういうことよくわからないけど。

Aさんが苦しんでるのはやだから。

…吐き出していいよ」

昨日、一昨日と見て来た目じゃない。

眠く怠そうだった目は、優しさに溢れていて

いつの間にか、彼方さんの腕の中へ飛び込んでいた。

『…うぅ…あたしだって…兄ちゃんの素振りするの…疲れたよ、ッ』

「うん」

『普通にッ、女の子として生きたいのにッ…ひぐっ』

「うん」

嗚咽を混じらせながらのどこかへの訴えを、彼方さんは優しく頷きながら聞いてくれる。

うん、うんって、優しく背中を撫でて。

その仕草が、とても落ち着いて

いつの間にか眠くなってしまっていた。

ウトウトするあたしを見た彼方さんは、あたしを楽な体制にしてくれた

「眠いなら、一緒に寝ようか」

色々あった事と、彼方さんの驚きの事実に疲れてしまったあたしは、その言葉を耳にしたあとすぐに眠りについた。

「…おやすみ、A」

そんな彼方さんの優しいつぶやきに気づかずに。

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あったかい。ポカポカする。

今、季節は夏なのに、冬にコタツに入った感覚のような、優しい熱を感じて目が覚めた。

優しい熱の正体は、彼方さんという名の猫だった。

なぜかあたしを抱き枕代わりにしている。

抱き枕代わりが優しい熱ってどういう事だ。←

起こしちゃ悪いかなと思ったけど、校舎の時計を見たら授業はすでに始まってる。

少し慌てたあたしは彼方さんを起こすことにした

『彼方さん、起きてください、彼方さん』

体を揺さぶるが、目を覚まさない。

どんだけ眠いんだ、と呆れたからほっぺをつねる事にした←

…よくよく見れば、彼方さんて美青年だよね

整った顔してる。兄ちゃんに少し似てなくもない

恐る恐る彼方さんの頬に触れると、予想以上の柔らかさで、スベスベで…

殺意が湧いた。

『あたしより肌綺麗とかなんなんだ…』

「お褒めに預かりどうも」

ため息まじりにつぶやくと、いつの間にか目を開けていた彼方さんの顔がすぐそばにある事に気づいた

『ちッ近いわボケ！！』

「いたっ」

どうしても彼方さんには慣れない。

手が出てしまうね←