【覆面系ノイズ】放課後、旋律がきこえる【杠 花奏】

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深桜side


やっぱり、深桜はユズの事好きなんだもん




『そりゃよかったね！とりあえず走るよ！深桜！』

振り返りながら笑い顔を見せるユズ。

『ッ、うん！』

あぁ！もう！！

大好きなんだから！！


言葉には出さないけど、そう心の中で叫んだ。



しばらく走って、疲れ始めた頃、ついたのは音楽家へと続く階段。

そろそろ体力も限界が近づき、足を止める。


『み、深桜、もう、むり…っ』

『何へばってんのよ深桜！』

少し先を走っていたハルヨシ先輩が振り向く。

『それ、にっ、こんな綺麗な声、近くで聞いたら、絶対、飲み込まれ…る！』


荒い息を整える。

あんな遠くから聞いてても惹き込まれそうそうだったのに、一番近い特等席で聞いたら本当に飲み込まれそう。

それに、怖い


たたでさえあの子…有栖川ニノが現れたっていうのに


あの日、ユズが泣いて帰ってきたあの日。
隣の病棟にいた女の子だったら…

もう一ミリも深桜の入る隙ないじゃん…！


『深桜…』

『いやっ、怖いっ！！』


心配そうにのぞいてくるユズを力強く押して離らかせ、背中を向ける


すると、階段の下の方から深桜たちと同じく、あの旋律を聴きに後輩から先輩まで集まってくる。


『ーーッ、行くよ、深桜！』


またユズに手を掴まれ、階段を駆け上がる。


やだ、やだよ、ユズ、離れていかないで


きっと、この声の持ち主を見たら、ユズは、ユズは…！！！


神様、さっきはバカって言ってごめんなさい。

どうか、どうかお願い、

深桜たちが音楽室に着く前に、旋律を止めて、いなくなって…！！

お願いだから…っ！！



階段を登り終え、ユズが音楽室のドアに手をかけた瞬間

音が止んだ。





そして







『…叶っちゃった…？』



中には誰もいなかった。

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