【覆面系ノイズ】放課後、旋律がきこえる【杠花奏】 (ページ48)

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ユズside

事務所を走り去ったAは、追いつけないほどの速さで人混みの中を駆け抜ける

A、何度も呼んでるのに気づかない

角を曲がって、木々を潜り、Aが止まったのはきたことのない丘だった。

丁度夕日が沈んでいくのが見える、眺めのいい丘

そんな丘の手摺にもたれかかり、何かを堪える動作をするAは

新歓で歌い出す前のアリスに似てた

『うわあああぁぁぁっ！！！』

途端に叫び出すA。

『っ、何処まで似てるんだよ…ッ』

こんな時でさえ、Aにアリスを当てはめることしかできない僕は、とんだクズだとは思う

でも

アリスと同じくらい君の声は大切なんだ

『Aッ！』

泣き叫ぶAを抱きしめ、手摺から離す。

まだ僕だと気づいていないのか、目を見開いている

『はっ、はっ…っにしてんの？！』

まだ顔が見れない

下を向きながら、訴えつけるように怒鳴ることしかできない

お願い、お願いだから泣き止んで

『声枯れたらどうすんのッ』

あの日のアリスのようにならないで、

僕の声を聞いて、

その声を失わないで。

だって

『“また”歌えなくなったらどうすんの？！』

…また、僕の想いを君に歌って欲しいから

『ユズくんっ！！』

想いが通じたのか、君は僕に抱きついた

…届いた。

繋いだこの手を、離さないように強く握った。

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