例えばこんな物語【黒バス】

灰かぶり 2 ページ11

真ちゃん。
そう呼ばれた男子生徒＿＿緑間真太郎は心底驚いているようだ。


その様子を見て咲は更に笑顔になった。


そして、おもむろに緑間の手にあるウサギのぬいぐるみを奪い取ると、
「うーん…。
美術のあの先生に言われてきた
のか……教室を散々駆け回ってきてくれたんだね〜
あ、今さっき女子トイレに入りそうになって思い止まった……ってとこかな＾＾」
ぬいぐるみを手の中でもてあそびながら、緑間の行動を次々と当てていく。


緑間は自分の行動を当てられてしまったのが不愉快だったのか、
「ふん…分かっているならさっさと移動するのだよ」
と不機嫌そうに声を発した。


そして、美術室に向かって歩きだす。
「はい、はい。分かったよ〜」
「全く…どうしたら校内で迷子になるのだよ」
「地図が頭に入らなくて…」
「学年トップ10に入るの奴が何を言う。
それぐらい人事を尽くせ」
「分かったよぉ」
ほんの少し遅れて咲も歩きだす。


「まあ、人間、得意不得意があるのだよ。どうしても駄目なら、無理をすることはない」
「…っ、…あはは！ 真ちゃんやっさしーじゃん」
「失礼だな。さっさと行くぞ」
「…はーい」



『無理をすることはない』


『無理しなくていいんだよ…』


『あんた、こんなことも出来ないの？』


「…っ……」
咲の脳内に駆け巡る言葉。
その言葉の破片を緑間に言われて少し思い出してしまった。
皆は、もう乗り越えたのだろうか。


あの、
眠れない程うなされる日々を＿＿。

あの、
トラウマに近い屈辱や罪悪感を＿＿。

あの、
運命と言えるであろう出会いを＿＿。


そして＿＿
「どうすればいいのかな……」


好きだよ、真ちゃん＿＿＿。

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