tunnel is out of green 2 -masaki- ページ15
・
nm「いってらっしゃーい」
a「いってきまーす」
二人の間延びした声を後ろで聞いて、鍵をポケットにしまう。
そのとき何かが手に触れて取り出すと、いつかのペンダントだった。
止まった俺に後ろから声が聞こえるけど、もう一度ポケットに閉まって手を振った。
・
小さなそれの存在感は半端じゃなくて。
ポケットが気になって仕方が無い。
いっそ捨ててしまおうかと考えたこともあったけど、生憎俺にそんな勇気はなかった。
・
a「マスター、いつもの頂戴！」
車で片道2時間。
なんとも都会から外れた場所にあるこの店は、仲のいい老夫婦が営んでいる。
笑うと目尻がさがるマスターに新しい豆を調達してもらって、さぁ帰ろう、というとき
ドアの向こうに懐かしい影を見つけて、思わず立ち止まった。
a「え………？」
間違えな筈なんてない。
車椅子に乗ったその懐かしい影は、間違いなく俺の
……母ちゃん。
「雅紀……大きく、なったわね……」
その声を聞いた途端、マスターにさよならと言うのも忘れてドアを飛び出した。
a「母ちゃん！！」
バタン、と後ろ背に聞こえるドアの音を無視して、一直線に母ちゃんの所まで走る。
なんだかまた随分、痩せた気がする。
a「母ちゃん、どうしてここに…？」
俺の問いなんかまるで耳に入っていないようで、ぽろぽろと涙を流す母ちゃん。
a「母ちゃん…」
「雅紀、雅紀………」
ついに俺の目からも流れ出したそれは、いつかの嘆きだったのかな。
なんだか自分でも訳わかんなくて、母ちゃんの目がよく見えない。
「この間……貴方が働いてる所に行ってね、ペンダントを預けてもらうようにお願いしたの。
"雅紀に会って下さい"って言われたんだけど…会えなかった……」
ペンダントを母ちゃんから預かってくれたのは、翔ちゃん。
「怖かったの…。貴方に会って、突き放されるのが。 そんなの分かり切ってる筈なのに、当たり前な筈なのにね…
だからペンダントだけ渡してもらったの」
a「でも…」
「一人で家に帰ってから、後悔した。やっぱり会えばよかったって。 貴方の顔が、どうしても見たかったの」
ずずっと鼻を啜る音が聞こえて、また一粒涙が零れ落ちる。
・
tunnel is out of green 3 -masaki-→←tunnel is out of green -masaki-
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 180人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひまわり(プロフ) - ちー♪さん» ありがとうございます（＾Ｏ＾） 本当ですか？！それは本当に嬉しいです；＿； これからも頑張ります！！ (2015年1月3日 19時) (
レス) id: c2fc12ef7b (このIDを非表示/違反報告)
ちー♪(プロフ) - 完結おめでとうございます！最後には思わず泣いてしまいました・・・これからも応援しています♪ (2015年1月2日 21時) (レス) id: 5698e14306 (このIDを非表示/違反報告)
ひまわり(プロフ) - ひまりさん» ありがとうございます、ダラダラと続いたお話を最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます；＿； がんばります！！！ (2015年1月2日 20時) (レス) id: c2fc12ef7b (このIDを非表示/違反報告)
ひまり - こんにちは。完結おめでとうございます。とても素敵なお話で、毎回更新楽しみにしてました。新作楽しみに待ってます。これからも応援してます( ´∀｀) (2015年1月2日 13時) (レス) id: 5be1096a86 (このIDを非表示/違反報告)
ひまわり(プロフ) - 碧李さん» 有難うございます！！！そう言っていただけると、頑張った甲斐があります^_^ 次も宜しくお願いします！本当にありがとうございました（＾Ｏ＾） (2015年1月1日 13時) (レス) id: c2fc12ef7b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ひまわり
| 作成日時：2014年7月23日 22時
