7 yt ページ7
.
コン、コン……
その日の夜。
クラスの奴らとサッカーをして汗だくだった身体をシャワーで流し、やっとすっきりした状態で部屋のベッドに寝転がると、部屋の窓が一定のリズムで音を鳴らしているのに気付く。
きっと何かが当てられているのだろう。
結局すぐに、俺は疲れた身体を起き上がらせる羽目になって、ベッドから抜け出し、そろりとカーテンを開けた。
…暗闇に佇むのは、いのちゃんだった。
2階にある部屋のカーテンを俺が開けたのがわかると、その顔はぱっと笑顔になって。
実は窓の外にいるのは他の奴かと想像していた俺は、そこにいたのが彼だったことに内心驚いた。
「なにしてんの。こんな夜に」
「ひまだからきたー」
彼は少し大きな白いTシャツに黒の短パン、それに加えサンダル姿と、制服ばかりみていた俺からすると、また違った印象に見えた。
オフモードなその姿を見れた事に、何故だか少し胸が弾む感覚がしたのを覚えている。
「いのちゃんもサッカー来れば良かったじゃん」
「俺はスポーツは苦手なの」
「でも暇って言ったって、こんな夜に何をすんのさ」
この島は、東京に比べれば街頭も家の明かりも少ない。
勿論、スーパーだってコンビにだって、既に閉店してしまっている。
こんな時間に何をするのか疑問を覚えたが、いのちゃんは下で「早く、早く」とそんな俺を急かすだけだった。
転校初日。
俺を無理矢理連れ出して「俺が、この島の思い出を沢山あげる」と言ってくれたいのちゃん。
灯台からの景色、小さな駄菓子屋、パドルボード、
彼はあまりアクティブな方ではなかったけれど、宣言どおり時々俺を連れ出しては、この島でしか出来ないような体験をさせてくれた。
だから、めんどくさがる素振りをしながらも、
心の中では、今日は何を見せてくれるんだろうってこっそりとわくわくした気持ちがあった。
この時は、いのちゃんが教えてくれるものは質が良いから、特別楽しみなんだと思っていた。
高校生にもなって、まだ俺はウブだった。
***
「…ちょ、えっ!?こんな所、危なくない!?」
時々、島の人間は並外れた行動力を見せ、圧倒されることがある。
今もその状況だった。
暗闇の中、舗装されていない山道を、草木を掻き分けぐんぐんと登って行くいのちゃん。
俺はといえば、彼の足を置いたところへ一歩一歩 的確に足を置いて、ヨタヨタしながら着いて行くのに必死だ。
「裕翔、顔上げてみ」
.
303人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あんこ(プロフ) - ユリアさん» ユリアさん!ありがとうございます。゚(゚^∀^゚)゚。時間かかってしまいすみませんでした!是非、ゆといの楽しんで頂けると嬉しいです!! (2018年9月30日 12時) (レス) id: 3a4575744a (このIDを非表示/違反報告)
ユリア - あんこさん、完結おめでとうございます!遅くなってすみません。まだ最後まで読んでいないのでゆっくり読もうと思います!新作はやまいのですね!やったーー(*´ω`*)嬉しいです。新作の方も楽しみにしてます! (2018年9月30日 0時) (レス) id: 5d6e48b7e5 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(プロフ) - めめさん» ありがとうございます!!1番しっとりした作品にするつもりです。見守って頂けますと幸いです。よろしくお願いします! (2018年9月15日 23時) (レス) id: 3a4575744a (このIDを非表示/違反報告)
めめ(プロフ) - すごくしっとりしたこのお話の世界観が好きです。更新頑張ってください! (2018年9月15日 22時) (レス) id: edc3e92603 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(プロフ) - 佐々木さん» 佐々木さんコメントありがとうございます(/*´ `)/いやむしろドキドキ初挑戦中です(笑)ytin.....頑張りたい!!!(笑) (2018年7月3日 22時) (レス) id: 3a4575744a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あんこ | 作成日時:2018年6月16日 22時